真逆なコンビ

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真逆なコンビ

ここはヒーロー育成学校。スキルを持つ者達がヒーローになるために様々なことを学ぶ場だ。スキルに目覚めさえすれば、老若男女、貧富問わずに入学できる。 特待生揃いのA組は、あらゆる攻撃にも耐性のある体育館でスキルを磨く訓練をしている。今は5m先にある的を自分のスキルで破壊し、集中力と命中力をあげる訓練の最中だ。さすが特待生揃いなだけあって、ほとんどの生徒は10個ある的のうち、最低でも7個は破壊していく。中でも破壊力、命中力共にずば抜けているのは……。 「さっすが炎谷(ぬくたに)くん! 全部命中な上にすごい火力ね」 「しかもそれを凍らせちゃうなんて、ホントすごいよ」 「フン、これくらい当然だ」 褒められても顔色ひとつ変えない少年に、女子達は更に黄色い声をあげる。 燃え盛るような赤い髪に、氷のように冷たい青い瞳を持つこの少年の名は炎谷氷聖(ぬくたにひさと)。スキルはふたつ持ち(ツヴァイ)で、炎と氷を自在に操る。A組の中でもトップクラスの実力を持つ美少年だ。 氷聖は自分が燃やした後に凍らせて鎮火した的を眺める。 (もっと褒めろ、俺を見ろ。俺はお前らよりもすごいんだ) 優秀ではあるが、少し高慢なところがたまに傷である。 破壊された的が床に下がり、新しい的が出てくる。氷聖は壁際に立ち、次に的当てをする生徒を見て鼻で笑う。氷聖の目線の先には、ボサボサになった深緑の髪をひとつ縛りにした、背の低い童顔の少年が準備運動をしている。 (裏金頼りの1つだけ《アインツ》が) ひとりの人間が持つスキルは1つだけとは限らず、それぞれ1つ持ち《アインツ》、2つ持ち《ツヴァイ》、3つ持ち《ドライ》と呼ばれている。育成学校にいる生徒の6割はアインツだが、特待生揃いのA組には、ちょうど氷聖の目の前で的当てをしている青葉緑(あおばりょく)だけだ。 「えいっ!」 緑は右手を突き出し、多肉植物を飛ばして的に当てていく。全ての的に当たりはするが、何分多肉植物だ。的が壊れることはない。傷すらつかない代わりに、的には緑色のシミができる。 「よし、全部命中!」 「緑くんすごーい」 「コツ教えてよ」 ガッツポーズをする緑に、数人の生徒が集まる。氷聖はいよいよつまらなくなり、舌打ちをして体育館を抜け出した。 「バカじゃねーの。あんなスキル、なんの役に立つんだよ」 吐き捨てるように言って階段に座ると、目の前の茂みが揺れた。 「ん?」 揺れる茂みをまじまじと見ていると真っ白な子猫が顔を出し、氷聖に向かってみゃあとひと鳴きした。 「なんだ、猫か」 氷聖は頬を緩めて言うと、辺りを見回してから子猫を抱き上げる。
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