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突然目の前が目を開けているのか閉じているのかわからない暗闇になって、どこか不安定な重力を一瞬感じたあと、目の前が暗闇ではなくなった。
瞬きをしてあたりを見ると、リアムが私を召喚したお城の中の儀式を行う場所だった。
台座の上になぜかお母さんと立っていて、ここ、立っていい場所?と考えて、慌てておりようとすると私に差し出された手。
手をたどるように見ると、私の旦那様。
リアムの姿を見て安心して手を借りて台座からおりる。
お母さんもリアムに手を貸してもらって台座からおりると、ここはどこ?といった様子であたりを見回す。
「リアム、お兄さんとお母さんとヒナタは?」
まずはご挨拶しなきゃ。
なんだかんだと準備に時間がかかって、1ヶ月もヒナタを預かってもらってしまった。
それでもかなり早いと思う。
リアムが決めると行動早すぎてこわいくらい。
「兄は…」
リアムはそこにいたというように振り返る。
私もリアムの視線の先を見たけど、誰もいなかった。
「あの棚の影に隠れているのが兄、ルカです」
リアムは薄暗い室内、更に暗くなってる影を紹介してくれた。
影である。
影しか見えてない。
極度の人見知りは本当らしい。
「よろしくお願いします、お兄さん」
私はぺこりと影に向かって頭を下げる。
お母さんはそろそろと近寄っていった。
よくないんじゃないかなと思ったけど。
「あら、イケメンさん。エレナの母、シズクと申します。よろしくお願いします」
にっこり笑顔でお兄さんの顔を見て挨拶している。
なにかずるい。
私もお兄さんを見てみたいのにっ。
イケメンならもっと見たい見たいっ。
覗き込むように首を伸ばしても見えない。
「よろしく…お願いします」
そんな男性の小さな声が聞こえた。
見たいーっ!
「ここは暗いので外に出ましょう」
リアムがお母さんと私を案内するように歩き出して、私とお母さんはリアムについていく。
お兄さーんと、私はお兄さんが見たくて、そっちをちらちら見る。
こそっと、こっちが離れたと思ったからか覗いた人。
キースさんが着ていたような事務官の制服とは違う、帯のようなものがついたローブ姿の人。
ファンタジーのコスプレっぽいその服を着こなすのは、リアムと同じくらい背の高い美形だった。
茶色の長いストレートの髪が似合う美形。
どこか線が細くて、記憶にある王子様より女性っぽいイケメン。
おぉとその容姿の麗しさを見ていると、私の視線に怯えたように更に隠れてしまう。
手を掴んで引っ張り出したくなる。
美人がいる。
まつ毛長くて鼻筋通って、男と言われてないと男と思えない美人。
いや、少し肩幅があるから女性の骨格ではなさげなのはわかる。
隠れているから全体を見れないのが惜しい。
お兄さんばかり気にして見ていたら、リアムに頭を押さえられて、首を捻るかのように動かされて痛い。
「エレナ、兄のことは気にしなくていいから。いないものだと思って」
「でも、めちゃくちゃ美人だしっ。…というか、私とリアムより若く見える…?」
「兄は27。今の俺とエレナより若いのは確か」
「20代前半に見える若さっ。…って、リアム、お兄さんより年上…になっちゃったんだね」
「そうだな。まぁ、俺がここにいるのが違うとしか思えないけど。過去に飛んで現在にいる俺に会えてしまうのは変な感じがする。……予知できる兄には、俺が年上になってここにくるのはわかっていた、らしい」
「もう1人のリアムはどこ?」
「ロバートに無理やり連れていかれたあとだから鉢合わせることはないよ」
見たかったのに。
リアムが2人並んでいる姿、見たかったのに。
儀式をする場所を出ると、こんなに明るかったかなという光が見えて。
いつか、そこで自分の姿を見たという窓の外は明るい光が射していた。
ひかれるように窓のそばに寄って、光をうつす空を見上げる。
私の赤ちゃん。
元気いっぱいに輝いていて安心した。
やんちゃ坊主のほうはというと。
さすがに1ヶ月も放置したからか、私とリアムとお母さんの姿を見ると泣き出して怒ってきた。
なにか立派な魔道士みたいな服を着てる。
その後ろには、これまた美人さんがいた。
後ろにボリュームのあるドレスを着た中世の貴婦人といったような人。
リアムのお母さんと言われても若く見えて、嘘だとしか思えない美人。
微笑んで女神様みたいなのに。
リアムを木に吊るしてサンドバッグにした教育ママらしい。
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