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「考え直しましょう?あなたにこの終末の世界を救う義理はどこにもありません」
キースさんはまだ私を説得する。
呼び出した人がその態度では亡くなった人がかわいそうだ…って、私も死ぬかもしれないんだけど。
どっちかといえば死ぬ確率のほうが99%というものなのだけど。
終末だよねーと、この世界を思う。
もう終わるしかない、みたいな。
太陽ってものすごく大事なものなんだなとしみじみ。
ただ私、真夏の太陽を思い出して、あの熱射病になる暑さを思い出して。
あれは殺人だろとも思う。
ベルソレイユのあの水槽って、中に入っただけでもあの暑さを感じるのか試してみたい。
ふれなければ、さわられなければ、消えることはないみたいだし。
「王女様に似てる人だけが条件だったんですか?年齢とか身長とかは?」
私はさらっとキースさんをかわしてみる。
キースさんはまた溜息をついてくれる。
「あなたは性格も王女に似ているかもしれません」
その王女様はどれだけ説得されても私がやると言ったのだろう。
それくらいじゃないと、王女様を犠牲になんてできないだろう。
似ているのかもしれない。
私、社畜だけど。
社(キースさん)の言いなりにはならないっ。
「条件教えてください。王女様が犠牲になってから進展はなかったんですか?なにか他に必要なものがあったとか。私だってただ失敗して自殺するんじゃなくて、成功したいですっ」
「研究はしましたが、確かなものはわかりませんっ。それでも成功率を高めるなら…」
「高めるなら?」
「妊娠してください」
はっ!?
………。
………はい?
なんて言いました?
聞き間違いですよね?
好青年キースさん。
見た目16の少女になにを言いやがる!?
いえ、中身、私、三十路で子供の1人くらいいてもおかしくもない年齢ですけど。
セクハラだ、セクハラだっ!
「王女のようにベルソレイユに目をとめられた者はいくら王女に似ていても多くはありません。目をとめられた者の中に妊娠している者がいたのです。彼女が消えてしまってから調べてわかったこととなるので、弁解するならわざと妊婦を犠牲にしたわけではありません。ただ、もしかしたらベルソレイユは子供が欲しいのではないかと。女性の姿をとる意味を考慮して、その案が浮かびましたが、今はまだ試すこともできていません。理由は私が言わなくてもわかっていただけるかと」
キースさんは教えたくなかったとでも言うように言ってくれる。
私はふむふむと頷く。
弁解していることから、それが人の命の冒涜ともとれるから、くらいが理由かもしれない。
悪魔になりたいわけじゃないのはよくわかる。
でも命を脅かすものを排除するための実験には少なからず命が使われるのが普通とも言える。
ハツカネズミだったり、臨床試験、治験というものだったり。
治るかわからない薬を使ったこともないのに治りますと売り出せるわけじゃない。
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