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キースさんが案内してくれたのは、図書館の中のジオラマの前だった。
しかも魔法でできているらしく、ボタン1つで外観から内部構造、各部屋の用途なんてものが見れる。
用途は文字で浮かび上がるから私には読めないけれど。
ジオラマがかなり立派なもので用途なんて書いてなくてもだいたいわかる。
本物っぽいのに立体なのに透けて見えたりして不思議なもの。
これ、いつまでも見ていられるかも。
なんて、私はそのジオラマをあっちからこっちからと見まくる。
すごい。見てるの楽しい。
お城のまわりの民家らしきものも雰囲気がいい。
あの夢の中の花畑の場所もここだとわかる。
お城からすぐの林道、その抜けた先にある緑色の場所。
このへんの木に大きな洞がある。
「ここは今は犠牲者たちの墓地となっています」
キースさんは私が見ていたその花畑があった場所を指さして言ってくれる。
「遺体はないので墓しかありませんが、集めることができた、研究も終わった因子はこのあたりに撒かれています。撒くとはいっても、人の目には見えないも同然のものですが。あとこの林道も太陽がないのですべて枯れ、枯れ木が並ぶばかりの道です。このジオラマは約15年前のものです。現在はこのあたりに新種の植物を育てる園があり、繁殖性の高いものが園から飛び出して自由に根を張り、あなたの部屋のあるこのあたりにもはえている、というところです」
キースさんはジオラマを指さしながら教えてくれる。
あのおいしくない白いりんご、いっぱい実ってるらしい。
おいしくないから実らないでほしい。
「少量ですが、この部屋で光で家畜と植物を育てています。魔法光というものなので太陽が与える恵みのようなものもないのですが、闇の中で育つものよりはにおいも味も色もあるものです。主に王へ出す食事に使われます」
キースさんはジオラマを操作して、大きなお城をぐるりと回転させて、地下の大きな広場のような部屋を教えてくれる。
王様はちゃんとしたものを食べられているらしい。
ちゃんとしたもの…と言えるのか、ちょっとあやしい。
「そういえば水ってどうなってるんです?川は凍ってるんですよね?」
お風呂入ったけど。
もしかしたら贅沢なことをしたのかもしれない。
「城を中心として半径100km四方が防御壁に囲まれています。小さな町もそれぞれの防御壁があります。この内部では人間が死なない温度を保てます。防御壁の外側は氷に閉ざされた世界です。国や地域へは転移魔法で移動します。防御壁から1歩でも外へ出ると即冷凍され、人間なら即死です」
魔法あってよかったねとしか言えない。
とんでもない終末。
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