条件

12/12

69人が本棚に入れています
本棚に追加
/112ページ
なんでそんなつまらない人生だったのだろうと思うときほど溜息になることはない。 私の人生なんだったんだろうと思うほど暗く沈んだ気持ちになることはない。 これがやり直しの人生ならどれほどよかったことか。 どうせなら召喚じゃなく転生させて欲しかったと思ってもみる。 ただ、その転生したような楽しい人生は夢でみる。 王女様の夢。 あれは私ではないと第三者の視点で見ているのに、どこか重なることがある。 王女様とキースさんは幼い頃からの友人というものだった。 恋愛みたいなものもなく、キースさんは兄で弟で友人。 一緒に勉強したり魔法を上手く使えるように学んだり。 キースさんはまだまだ子供なのに先生にも誉められるくらい優秀で、王女様は失敗ばかり。 そんな王女様に魔法を教えるキースさん。 ある日、太陽が世界からなくなってしまった。 大災害ともいえることが起きた。 天候は大荒れ、大地は揺らぐ。 王女様はキースさんの魔法で守られた。 小さな子供2人を守るくらいの小さな防御壁。 誰かが大きな防御壁をつくってくれるまで、2人はそこで身を寄せあっていた。 そんな災害しかない人生なら、とんでもない人生なのだけど。 王女様は王女様。 多くの人に守られて、ちやほやされて育つ。 しっかり防御壁に守られたお城の中で自由奔放。 目が覚めてすぐは覚えているけど、少しすると忘れる夢。 私は王女様ではないし、その人生なんて知るはずもないのに知っている。 デジャブじゃなくて、あ、ここ、夢でみたと思い出す。 きっと、私は私じゃない。 どこかでわかっているのに私もいる。 社畜で三十路でお風呂で溺れて死んだ私も確かにいる。 それはきっとキースさんならわかってくれると思う。 小さい頃から王女様のそばにずっといた人だから。 というか、そんだけそばにいたなら恋愛になればよかったのにとも思う。 なる前に王女様が消えてしまったのかもしれない。 16歳で。 今の私のこの体の年齢で。 王女様が望んだから。
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加