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メイドさんに折り紙を教えてあげたら、魔法が使えなくてもできるこっちの遊びを教えてもらった。
とはいっても指スマだよね?というもの。
いっせーのでで指を何本たてているか予想するゲーム。
親指だけでやるはずが両手の指を全部使うからなかなか当たらないし、3人でやったらもう終わってる。
私はなかなか当たらないのに、なぜかメイドさんたちは当ててくる。
なんでー!?となりながら、きゃあきゃあやっていたら、こんこんっと扉を叩く音。
「はーい」
次こそは勝つと意気込みながら返事をして、いっせーのとやったら勝負はついて負けた。
私の指は10本とも残ったまま。
メイドさんたちは喜ぶ。
私はがっくりと項垂れる。
「エレナ様、そう落ち込まずに」
「イカサマだっ」
「違いますってば。あ。イカサマできちゃうゲームならこういうのが…」
なんて、双六のようなものをぽんっとメイドさんが出してくれたと思ったら。
「終わり」
なんて言葉と共に消されて、ん?と思って視線をあげるとキースさん。
「しっ、失礼しましたっ」
「キース様、も、もう少し研究室のほうにいらっしゃっても私どもがエレナ様のお相手をさせていただきますからー」
メイドさんたちは言って。
「終わり。さがれ」
キースさんが言うとぺこりと頭を下げて、ささっと部屋から出ていった。
イカサマ双六やってみたかったようにも思う。
たぶん私、マスにある文字読めないけど。
文字も覚えられるかもしれない。
「エレナ。あなたがここに滞在している理由はなんでしたっけ?」
キースさんがなにか不機嫌に聞いてくれる。
いい機会かもしれない。
絶対そうだ。
セクハラだけど言うしかない。
「キースさんの精子をくださいっ」
がんばって言ってみたら、口を叩かれるように塞がれた。
キースさんが真っ赤になってる。
私は慌ててキースさんの手を自分の口元からはがす。
「違います違いますっ。ベルソレイユを目覚めさせるために妊娠しなきゃなので。妊娠さえできればいいだけなのでっ」
いや、違うくないかもしれないけど、とりあえずキースさんには出してもらわなきゃならない。
精子。
「その話はしばらくやめましょう!?正直に言って俺はしたことないんですっ!」
キースさんは恥ずかしそうに、どこか懸命に真っ赤になって言ってくれる。
かわゆい。
童貞。
それならえっち教えてあげたい気もするけど、やっぱりそれは童貞さんからしたら、かなり抵抗あることになりかねないしー。
あ、でも私、見た目は王女様だし、まだ手を出しやすいともなるのかな?
などと、どこか経験者というものをふりかざしてしまいたくなる。
いやいや、ここは、わ、私も初めてで…とか、ちょっとぶりっこしとくほうがかわいいかもしれない。
あざとくなりたくなるのは、キースさんがかわいいからだ。
うっぶうぶになりたい。
「え、えっと…。あ。私、この手、この手にふれてるだけでもいいです」
咄嗟にひきはがすためにふれたキースさんの手をにぎにぎ。
綺麗な手をしていらっしゃる。
セクハラだなーと我ながら思いながら、綺麗なその手を撫でてみたりしてみる。
逃げるようにひこうとするから、がしっと両手で掴んで、だめっと視線をキースさんに向けると、私に虐められているかのような真っ赤な顔。
かわゆす。
手のひらにちゅっちゅっしまくって、かわいがる。
もう、なにこのかわいい人。
そのまま女に慣れないでいてほしい。
慣れるなら私の知らない、私がいなくなったあとにしてほしい。
このかわいいキースさんは私のもの。
ちゅっと手首にキスして、唇で軽く愛撫。
「……エレナ…、あの…」
なんて声を聞きながら、ぺろっと指を舐めて、指先を口の中に入れて吸ってみる。
キースさんの全身食べてみたくなってくるけど、手だけで我慢しとく。
だから精子を早くくれ。
キースさんのもう片方の手が私の頭にふれて、私は視線をキースさんの顔に向ける。
キースさんの顔がどんどん近づいてくる。
あれ?これって…。
なんて思って。
その瞳がふせられて、唇が唇にふれそうになって。
私はキースさんの唇に手を当てて押し返した。
キースさんは驚いたように目を開けて、すぐ近くから私を見る。
「キスはしちゃだめっ!」
私は強くキースさんに言った。
キスなんかされて私がキースさんを深く好きになってしまったらどうしてくれよう!?
私がする一方的な体へのキスくらいでいい。
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