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教訓。
セクハラしすぎると、とんでもない仕返しをされる。
ただ、セクハラをしてないのに、キースさんは私を怖がらせることが楽しくなったかのように、怖いところにばかり案内してくれるようになった。
そうじゃなくてヒーリングルームというなら、川のせせらぎが聞こえるようなところとデート先を注文すると、大きな滝の上だったり。
せせらぎじゃなくて爆音だし、お互いの声も聞こえないし、なにより足を滑らせたら滝つぼに真っ逆さまだし。
そうじゃなくて癒しなんだから可愛い動物がいるところと小動物の動物園を想像して注文してみると、これ、どう考えてもモンスターですよね?というような、この世界の野生動物がうろうろしているところに案内されて、危うく踏み潰されかかった。
しかも凶暴そうな猛獣のようなものばかりでかわいさの欠片もなかった。
もうヒーリングルームのデートはやだとして、キースさんも働いてくださいとして、キースさんの職場見学にしてみた。
ベルソレイユが見られるあのモニタールームに案内された。
白衣の人が数人、なにをしているのか働いていらっしゃる。
「私の仕事は今は主にこのベルソレイユの管理ですから。ベルソレイユに動きもないので私1人が抜けても困ることはありません。彼女はひたすら眠ってくれています」
私の職場見学にそんな説明をキースさんが添えてくれる。
眠り続けていられても困るんだよねと、私はモニターに映ってるベルソレイユを見る。
こんこんっとやれば目を開けてくれそうにも思う綺麗な横顔。
なにも変わらない。
「キース様、いらっしゃっていたのですか?」
奥の部屋の扉が開いたと思うと、そんな声をかけながら近寄ってきたのはまたイケメンな男だった。
キースさんみたいな猫の目でもない。
キースさんの後ろに隠れるようにして覗き見る。
これもイケメンだけど、キースさんのほうがいいなぁと。
「あぁ。召喚はできそうか?」
「異世界を隈無く探しても、条件に合う者は多くもありません。……と俺が言わなくてもわかっていらっしゃるくせに」
イケメンは成果はないと言うように言って、その視線がやっと私を見た。
条件。
召喚はつまり、私以外の王女様に似てる人というところか。
この人も召喚するのかもしれない。
「えぇっと、確か、ミヤちゃん」
ものすごーく馴れ馴れしく呼んでくださった。
というか、そう呼ばれるのはかなり久しぶりのようにも思う。
「エレナです」
私はそう訂正させてもらう。
宮里エレナが私の名前である。
この世界の名前の並びからして、私の個人の名前はミヤサトになっているのかもしれない。
「ミヤちゃんでよくない?俺はジェイミー。ジェイミー・グレイス。ジェイとでも呼んで」
にっこり笑って自己紹介をくださった。
どこか軽い印象にイケメンはこれじゃないと思ってしまう。
「グレイスさん、馴れ馴れしいですね」
「人見知りしないって言ってくれよ。ミヤちゃん、しばらくここにとどまっているんだろ?よかったら俺とデートしてくれない?」
これじゃないとどうしても思ってしまう。
ぴとっとキースさんにくっつく。
私を召喚したのがキースさんでよかったと思う。
下手をしたら、こいつに簡単に種つけられていそうだ。
最後なんだから思い出に、とかいって。
16くらいの少女なら騙されかねない。
「……睨まれてる。俺」
グレイスさんはキースさんに訴える。
「おまえが軽薄な態度で接するからだろ」
「キース様、口説き落とすのも召喚士として必要なことですよ!?誰が好き好んで無関係な世界に身を投げるか。……キース様では口説き落とせていないはずなのに、よく留まってますね」
グレイスさんは気がついたかのように私をまた見る。
口説き落とせない人。
キースさん、かわゆ。
すりすりとキースさんの腕に擦り寄って、こっちがいいとどうしても思う。
「キースさんに種をいただいて妊娠したらがんばります!」
私ははっきりとグレイスさんに宣言して、キースさんの手のひらにすぐに口を塞がれた。
「……情を入れないほうがいいですよ、お互いのために」
どこか白けたようにグレイスさんは言ってくれる。
こっちがいい。
私はキースさんの手を両手で捕まえてキス。
情があるから身を投げる。
無情な人にはわからない。
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