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「くれる種はあんたのなんか絶対いや。もう少しかわいげあったならいいけど生意気だし自信家だし軽いしペラッペラ。あんたなんかに召喚された子が哀れにも思うわ」
「俺もおまえみたいなクソ生意気な女を召喚することがなくてよかったって思ってるよ!俺が別の犠牲者召喚しなくてもいいように、さっさとベルソレイユを目覚めさせてくれ」
グレイスさんは私に唾でも吐きかけそうな勢いで言って、背中を向けて部屋を出ていく。
もっと続けるかと思ったのに。
少しは理性あるらしい。
「……エレナ、あまり召喚士を怒らせないでください」
キースさんはぽんぽんと私の頭を撫でるようにして困ったことのように言ってくれる。
「だって偉そうだったし」
「偉そうではなく、召喚士は世界にも多くないので偉いんです。私のほうが地位も技術もあるのでジェイは私を少しは敬った態度でいてくれていますが、経験年数は彼のほうが上で、年齢も彼のほうが上。彼が別のところで働くとなれば、どこでも彼を受け入れ、頂点に彼が立つこともできるのです」
思いがけず偉かった。
キースさん。
あの生意気なのはちやほやされるのは最初だけで、あとは孤立しそうだからどうでもいい。
いや、あれのおかげで研究の成果があがっているのかもしれない。
妊娠とか。
あやしい。
「キースさん、すごく偉い人だったりします?」
「ここの現在の責任者は私です。ジェイとは違い、国の直属の召喚士でもありますので、国の中では地位はあるほうです」
「ベルソレイユを管理する責任者ってすごく偉くないですか!?」
「国の中ではそうなるかもしれません。ただ、本来はベルソレイユは王が管理しているもの。ベルソレイユは世界の命運を握る鍵ともなるものですから、私が任されていいものでもありません。これは私が召喚士だったことや、現在の王の体調、私が王女と少しばかり親しかったことなどが因果となり、私が好んでこの地位についているわけではないのです」
王様の代理というだけでもじゅうぶんすごいんですけど!?
これはもう王子様でいいんじゃないだろうか?
王様が亡くなったら継ぐのはキースさん、みたいな。
「それに……」
キースさんは更になにかを言おうとして。
その言葉の続きを待ってみたけど、なにかを言うことはなく。
「キース」
声をかけられて、キースさんはそっちへ歩いていく。
なにか難しいお話をしてくださっていて、その用語がなにか理解できなくて今度は私はなにも言えない。
ベルソレイユのまわりの液体のお話かと思われるけど、その成分がどうたらこうたらと難しい。
キースさんは普通にそれなら、あーしてこーしてと答えて、頭いいんだろうなというのはわかる。
召喚士で研究者。
ここの責任者に適任だったのかもしれない。
本人が望んでいなくても。
キースさんが1番頼りになったのだろうと思う。
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