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やってやるぜ、ダッチワイフのノリでキースさんに仕掛けても、いっぱい興奮していても途中で止められてしまう。
その体の上に乗りかかって、さて下半身をいただきますとしようとすると、くるりとひっくり返されて、ベッドに押さえつけられる。
「だめだって言ってる…でしょう?エレナ」
なんて言われて、きゅーんきゅーんと欲しがってみせてもくれない。
私も裸になっちゃえばもしかしたらーなんて脱ごうとしてみたら、両手を拘束するかのように頭の上で手首掴まれて、がぶっと唇食べられちゃうだけ。
かたい。
これ、他の人にもらったほうが絶対早いと思えるほどかたい。
かたくなってくれる理由は1つ。
「俺がセックスしたら妊娠してようがいまいが即ベルソレイユに近づきそうだからあげない」
よくわかっていらっしゃる。
その通りである。
もう、そこ、どうでもいいかなーとも思ってきている。
思い出に、記念に、キースさんの童貞は食べたい、になってる。
奪ってやったで消えるなら満足だ。
だから下半身かたくするだけにして、身持ちは柔らかくいてほしい。
キースさんの唇から魔法のごはんをたくさんいただいて、頭の中がどろっどろに蕩けて好きなようにしてーとなっちゃうと、キースさんも蕩けて、私の頬を頭を撫で回すばかりになる。
生きろ、とされている。
ごはんはいくらでもあげるから、いくらでも生きていけとされている。
キースさんは研究を続けたいと思っていないから。
私を……死なせたくないから。
私は死んだ。
わかってるはずなのに。
私はここにいる。
それをわかってくれているから。
私には深く誰かを好きになっても未来はない。
どちらかといえば、この器で妊娠はできないし、ベルソレイユを目覚めさせるのは不可能なんじゃないかなと思ってる。
ニセモノ。
壊れてしまう脆いもの。
ベルソレイユの体もニセモノ。
肉体が必要なんじゃないかなと思ってしまう。
太陽に必要かといわれたら…いらないと思うけど。
なんとなく。
人間の姿だし。
「女体に興味はないですか?キースさん」
などと聞いたのは、唐突だったようで。
キースさんはずべっと転ぶかのような態勢で机に突っ伏した。
食事の支度中。
「……女体自体は13くらいの頃からベルソレイユで見慣れてます」
約10年前にはベルソレイユは誕生していたらしい。
「その体もベルソレイユが基本になって創られています。俺はクリスティアの裸なんて見たこともないので」
そうなんだーと自分の体を改めて眺めて、胸をむにむに掴んでみる。
の割には小さい、ここ。
王女様の体にしようとして、ここの肉づけはベルソレイユより悪くされたと思って間違いはない。
だったらウエスト縮めてくれてもー、って、お腹をふにふに掴んでみる。
脂肪ついたかもしれない。
魔法のごはんで太ったか?
壊れたときにお腹が最後に残ってるって、めちゃくちゃ嫌かもしれない。
それでも。
死ぬ前の私よりいい体。
「これはエレナの裸ですよー?」
見て盛れーと露出狂のようになってやろうとしたら、はい、と椅子に座らせられた。
目の前にはおいしそうなごはん。
ちょっと摘んで食べてみる。
おいしい。
「これ、魔法のごはんじゃないですよ?」
「よくわかりましたね。魔法の食事はキスで、とエレナが望んだので本物の食事です」
キースさんも椅子に座っていただきますをする。
「ん」
私は体を乗り出して、キースさんに唇を向けて。
キースさんは優しく私の唇に魔法の食事をくれる。
キスをいただいてから、改めて本物のごはんをいただきますをして。
また少し、こんな浮かれた幸せな時間を過ごしてる場合じゃないのだけど、なんて思ってみたりもする。
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