さよならの前に

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どうすればキースさんを動かせるだろう?と考えてみる。 ベルソレイユの目覚めのあとの世界が平和で幸せを約束されたものなら、それを望みたいもの。 だけど、それも未知なもので、ベルソレイユが太陽となるのか誰にもわからない。 それに賭けるしかないだけ。 他の国はなにをやってるのー?とキースさんに聞こうと思っていたら、それより前に城内で世界各国のお偉い方々が集まる首脳会議みたいなものを開いてくれて、メイドさんからの噂話でベルソレイユが今1番有力な解決法とされていると教えてもらえた。 「この国がこの世界では1番発展してると言っても過言ではないのです。研究所にいらっしゃる方々も各国から集まった有能な人材です」 「召喚士少なくないですか?」 各国から集まっている割には。 「太陽の消滅時の災害で世界中で多くの方が亡くなったのです。国が存続できているのが奇跡とも言えるくらいのものです。現在、城を守っている防御壁を創るにも無理をして体を壊して亡くなってしまった方もいます。それだけでもなく、召喚士は多くの知識や計算式、それを操る技術力と魔法力を必要とし、半端な者では術式を開くこともできません。世界に召喚士と名乗る者がいても、ほとんどの者は異世界からの召喚などできないのです。グレイス様とキース様は希少な存在なのです」 なんだかものすごーくすごい人のようだ。 キースさん。 グレイスさんがすごいのも少しは認めてあげよう。 太陽の消滅は夢でみた。 まわりの様子すべてが見えるものでもなかったけれど。 身を守れた人は多くはなかった、のだろう。 町があるはずの場所に明かりも見えないのは、みんなこの城に集まって身を寄せあっているからかもしれない。 ……それだけの人数しか生き残れなかった、となるのかもしれない。 太陽がまた空に戻ったとしても。 元の世界に戻るにはどれだけの年月がかかることになるのか。 終末すぎて胸が苦しくなるお話だ。 「確かに召喚士が多くいれば試してみたい因子を持つ方を次々と呼んで承諾を得ることも可能かもしれませんが、それを検索する能力も必要となるのです。因子という細かなものを世界から、異世界から見つけ出すのは至難の業と言えるものです。見つけても承諾を得られるとも限りませんから、それは何億、何千という星の光の向こうを見ているような途方もない労力となります」 星の光の向こうって、なにがあるかもわかんないのに。 光ってるか光ってないかもわからない星を肉眼で探すようなもの、とすると、吐き気がしそう。 たくさんのアリの中で1匹のこれと見つけることもできそうにないのに。 でも、人の数は日本だけでも一億二千万。 世界人口は確か80億くらい? 私の世界だけでこれなんだから、すんごい労力なのはよくわかる。 ……グレイスさん、認めてあげよう。 でもキースさんのほうがイケメンは譲ってやらぬ。 「エレナ様はベルソレイユ様を目覚めさせようなどとはお考えにならなくてもいいのです」 「そうです。このままこちらの世界でお暮らしになって、誰かがベルソレイユ様を目覚めさせてくださるのをキース様のおそばでお待ちください」 ん?と思われることを言われた。 ……滞在しすぎて、暮らせになってるのかもしれない。 まぁ、帰れませんが。 私、還るならあの世ですが。 ここにいても魔法も使えないし、なんの役にも立たない。 すごい人の召喚能力でおいしいごはん食べてるだけ。 さすがにそれはよくないと思うのだけど。 世界が期待するプロジェクトの責任者にやる気出させないと世界の命運握りつぶしそうなんだけど。 あれ?なんか胃がキリキリ痛む気が…。 キースさん、お願いだから私を研究材料にして。 どうしてもそれを望む。 私はもう今更、結婚や子供なんて望んでないから。 あなたが私の死を悲しんでくれただけで幸せだから。
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