さよならの前に

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会議の間は私は城内を歩くことを禁止とされて、メイドさんが遊んでくれる。 キースさんは当然のように会議に出席中。 メイドさんたちも幼い頃にその太陽の消滅による災害に遭った。 太陽が消えて即世界が凍りついたということはなかったみたいだけど、大きな地面の揺れや有り得ない突風、竜巻に一気に世界は壊滅状態。 生き残れても世界は闇に落ちていって、明かりが戻ることもない。 「宮廷魔術師であったキース様のおじい様が砕けて消えた太陽の因子を集められ、ベルソレイユ様が誕生することになったのです」 「ただ、キース様のおじい様は太陽の因子が持つ人間にとっては強い毒素を浴び続けられ、病を患われ亡くなられ、そのあとをキース様のお父様が継がれ、お父様も亡くなられて、現在、キース様が継がれている、となります」 メイドさんたちはそんなお話もしてくれて、私はふむふむとお勉強。 そりゃベルソレイユを憎みたくなるよねーとも思う。 親しい人がみんなベルソレイユに殺されたようなことになってしまってる。 毒があるからモニターで見てるんだなと研究所の景色を浮かべる。 あの体制になるまでも試行錯誤だったんだろうなと安易に浮かぶ。 「キース様の魔術師としての能力はキース様のおじい様やお父様より素晴らしいものがあります」 「加えて頭脳明晰でもいらっしゃって、グレイス様とは違って情動的なところもありつつ理性的でもあり。グレイス様は仕事はできる方だとは思いますが、少しばかり情動的な部分が欠けられ、笑えない冗談を仰る無神経さやずるさがあり、ベルソレイユ様を目覚めさせるために尽力した方々をゴミのように話される成果主義。……あれはきっとサイコパスですね。表の顔はイケメンで話もしやすいように見えますが、裏の顔を見ると絶対に仲良くしてはいけない人とわかるかと」 グレイスさん、メイドさんたちにも不人気だ。 いい気味だ。 そうそう。すごい人かもしれないけど、あんなの仲良くしちゃだめ。 遊んだ女は何人いるんです?ってやつだ。 あれに騙された犠牲者がいるかもしれないのが腹立たしい。 でも。 ……社畜視点、グレイスさんくらい鬼じゃないと研究の成果はあげられないし、進歩がないのかなと思ってしまう。 現状のキースさんしかり。 グレイスさんが言っていたことがよくわかることになってる。 「我が国でキース様は1番の有望株です!エレナ様はもうよくご存知かもしれませんが、キース様なら素敵な旦那様になっていただけること間違いなしです!」 そしてまた、そうくるのね?メイドさん。 私、キースさんと結婚しろと言われてます?みたいな。 「キースさん、そんなに評判いいのに、なんで恋人いなかったんです?」 それを聞いてみると、メイドさんたちは口を閉じた。 なんで?なんで?とメイドさんを見て、その答えを待ってみる。 「……いえ、あまりに有能な方なので私では相手にされるはずもないかなと」 「そういえば女性の影がないですよね、キース様。そういうところとは無関係なところにいらっしゃるようにも思っていました。でもでもっ、今はエレナ様がいらっしゃいますからっ」 すごい人すぎて恋愛対象外になっていたようだ。 グレイスさんとは違うから業務以外でメイドさんと話すキースさんは確かに想像できない。 ……私、キースさんに業務以外のことさせまくってます?もしかして。 自分に問いかけてみると、思い当たるものがいくつか。 最初の降魔術となったことを含め。 そして今に至る。 ……私のせいやん。 仕事滞らせてるの私やん。
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