さよならの前に

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その夜、キースさんをなんとかベッドに連れ込んだ私はキースさんの初めてをいただいた。 弱ってる男に強引に迫ってしまったことになるかもしれない。 まるでどこかの風俗嬢のようなことをしたかもしれない。 この体はニセモノだけど、私には本物で。 痛みがあるように気持ちよさもあって。 キースさんのえっちはすごーく気持ちよかった。 らぶらぶな気持ちで、終わったあと、キースさんの腕枕で眠った。 ぴとっとその体に寄り添って、体温を感じながら幸せ満喫しまくって。 でもみる夢は同じ。 王女様の夢。 だけど、今回は平凡な日常でもなくて、キースさんが目に痛みを訴えて騒ぎになった夢。 目に包帯を巻いて、包帯の上から治療されるキースさんを王女様の隣で見ていた。 包帯がはずれたら、キースさんの瞳は今の猫の目になっていた。 変異というもの。 その目が持つ特質が調べられると、人間ではないものに不気味がる人もいた。 世界はこれからそうやって変質していく人間が増える前兆だと唱える人もいた。 渦中のキースさんはなにもかも無視するかのように、その目を活かせることとして真っ暗の闇の中で植物を育てたりという研究をしていた。 家は継がないけれど、国の中ではちゃんとした地位が約束されていた子供は、今度はその闇の中で自由に動ける目というものを持つことで、まわりの大人たちの研究対象となり、様々な実験をされるモルモットになった。 王女様はそんな扱いをキースさんがされるのを許せなかったらしい。 私も研究材料としてベルソレイユに近づけさせろ、となった。 誰かを救いたいなんていう聖女様のようなものでもなく。 大人と反発しあった結果。 キースさんが自分が研究対象にされるのはどうでもいいとしても、王女様は止まらなくなった。 私、らぶらぶの幸せ絶好調で眠ったのに、すんごい夢をみている。 もうちょっとほのぼのした夢がいい。 まぁ、こういう事実があったのだなとキースさんの過去を覗き見れてうれしくもあるけれど、ここはディープすぎる。 早く起きたい。 起きたらキースさんとらぶらぶ。 なんて思いながら、目の前でケンカをしてくださるキースさんと王女様を見ている。 「リアムはもう研究なんてしないでっ!魔法使うのは禁止っ!」 「自分自身にはなんの害もないから大丈夫だって。目はさすがに痛かったけど、他は別に痛くもない…」 なんてキースさんが話していると、王女様は怒ったかのようにキースさんの服を破るかのように引っ張った。 キースさんは慌てたように胸を隠す。 「男として分化して生まれた体が中生体になるなんておかしすぎるでしょうがっ!」 王女様はキレまくりだ。 「…大丈夫」 「なにが大丈夫なのか言いなさいっ!瞳の変異しかなかったのに、他になにかされたんでしょっ!?変異なんかじゃない、これはっ!」 王女様はキースさんの隠そうとした胸を鷲づかんだ。 キースさんは痛がってやだやだと王女様を遠ざける。 胸に膨らみのあるキースさん。 え?なにそれ?下半身は? それを見せてもらおうと近寄ろうとしたら、王女様から逃げるようにキースさんは走っていって、王女様がそれを追いかける。 「あんたはもう魔法から遠ざかれっ!」 「少しホルモンバランスいじられただけだってっ!クリスティアより大きい胸にもならないからっ!」 「こんの大馬鹿者っ!!あんたが自分の体を生体実験に使わせるなら、私だってやってやるんだからっ!」 「ベルソレイユは危険だってっ!因子だけで被爆するっ!俺の目はベルソレイユに関わった被爆だっていう検査結果をクリスティアも聞いただろっ!?俺はベルソレイユを見ていただけで被爆したんだよっ」 「被爆したんだからあんたはベルソレイユにもう関わるなっ!」 王女様はキースさんに飛びかかって、キースさんは王女様に倒されるように床に倒れた。 王女様はキースさんの背中に馬乗りになって、ふんっと鼻息荒くキースさんを押さえつける。 毎度のことながら仲良しだ。 あははうふふという追いかけっこでもないけど。 じーっと2人を見ていたら、キースさんは私に気がついて、私に助けを求めるように手をのばす。 夢の中、私はキースさんの目にはなにに見えているのか。 王女様は私が見えていないようなのに不思議だ。 私はキースさんのそばにいって、のばされた手にお手をする。 すがるようにぎゅっと手を握られた。 私、犬かな?猫かな? ……なんでもいい。 私をあなたが見てくれるだけでうれしいから。 目をゆっくりと開けると、私の目にはキースさんの裸の胸が見えた。 頭を抱かれて引き寄せられている。 膨らんでない。 つんつんとつついてみると硬さのある男の胸。 色白だし、ひ弱そうなのに骨じゃない。 骨を探すようにキースさんの体を撫でていたら、手を捕まえられた。 視線をあげるとちょっと赤くなってるキースさん。 起きて私を見ていた。 「おはよ、だーりん」 などと言ってみると、キースさんは更に赤くなっていって、顔を隠すように目を伏せて俯く。 そのままうっぶうぶでいてほしい。 いや、えっち、ほぼキースさんがしてくれたようなものだったんだけど。 ぴとっと体を寄せて、足も絡めて、全身に体温を感じて。 幸せ満喫。
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