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これはマッドサイエンティストか悪の魔法使いか、というようなキースさんに、人が絶対にこないようなところで全裸にされた。
えっちなことをされるほうがましなくらい、人体改造をしてくれようとしているキースさんに怯えて、無理無理無理無理と逃げ回ったら簡単に捕まった。
魔法、卑怯だ。
祭壇を診察台のようにして、キースさんの手が私の体にふれる。
全裸で検診なんてされたことないから、さすがに恥ずかしすぎる。
「エレナをここに降ろしたあとにこの体をちゃんと調べられてもいないから、みてみないととは思っていたんです。でもエレナですから。エレナはここに本当にいて、クリスティアには絶対にない可愛らしさを見せてくれて、女性でしたから、さすがにできないと思っていたんです」
「なら、今もやめましょうっ!?」
「触診だけですよ。……全身性感帯かのように、さわるたびにびくびくするのやめません?」
「やだーっ!って、ちょっ、やっ、恥ずかしいですーっ!」
真っ赤になってびくびくしまくって、声をあげまくっていたら、とうとう体の感覚を消された。
どこをさわってなにしているのか見ないとわからない全身麻酔かもしれない。
目がうるうる。
真上を見てるしか体が動かない。
指がない。
体がない。
そんな錯覚。
もう眠らせてほしい。
恐怖でしかない、こんなの。
「エレナのものですが、この体は俺のものです。そんな酷いことをするつもりはありませんよ。でも脈うつこの心臓が本当にここに在るのかは興味あります」
「解剖はやめてくださいっ!?」
「開かなくても透過でさわれます。というか、さっき心臓に刻んで肌に模様が浮きました」
「内臓に刻むのは卑怯だと思うのです」
「魂にふれられるのなら、そっちにふれたいくらいですよ、俺は。エレナと結婚することになるのなら、もっと早く、エレナが自分の肉体を持って生きているうちに召喚すればよかったと悔いています」
「あのぅ、私、だから、キースさんよりけっこう年上です…」
「知ってます。4年前にエレナを見つけたんです。4年前のエレナのほうが亡くなる前のエレナより肉つきもあって綺麗でした」
いや、それ、複雑になるから言わないで?
体調管理できてなかったから死んじゃったってよくわかる。
まぁ4年前でも。
ここに召喚されるのはベルソレイユを目覚めさせてという目的のため。
消えてしまう。
……ありがたいかもしれない。
この2度目の人生をくれたこと。
今度こそ悔いがないようにがんばろうと思えるから。
「俺の理想で言うなら、この体ももう少し大人の色気のあるエレナがいいです。クリスティアと同じ因子があるはずなのに、ちゃんと女性で…」
「……覗きはやめてください」
「た、たまたま見てしまっただけですよっ。……召喚すると言いながら、召喚せずに失敗したと報告するためによく見ていたように思います」
私の神様。
見守ってくれていたから、私は今ここにいる。
本当にぜーんぶあなたにあげても惜しくはない。
グレイスさんが私の神様だったなら…、いや、あれ、まずそういうことしそうにないんだけど、もしそうだったなら、即お断りしたと思う。
「声……、私を呼ぶ声が聞こえていたんです。あれ、キースさんでした?」
ふと思い出して聞いてみた。
「声…をかけたことはないと思います。どんなふうに聞こえていました?」
うーんとそれを思い出してみる。
「男か女かもわからない不思議な声で、空耳のように私にしか聞こえなくて…。エレナ、と私の名前を呼ぶ声。高校生の頃に馬鹿なことをしたので、そのときには聞こえていたとはっきり覚えています」
「俺じゃなさそうです。エレナが学生ということは、俺は8才くらいの……。……ベルソレイユ?」
「やっぱり思いますっ!?」
私は起き上がりそうな勢いで聞いて、起き上がれずにキースさんを見上げる。
「いえ、ですが、太陽の因子は集められても、まだまだ今のベルソレイユの形にもなっていない頃です。その因子で被爆する危険があるので集めたものだったはずですが、祖父が新しい太陽をこれで創れないかと研究を始めたのです。生体とされたのは素体が膨らみなにかを形成しようとしてから。その因子に生体反応があったわけでもない。天体、だったはずなので」
「……じゃ、誰なんですか?私を呼んでいた人。死んだからかもう聞こえないんです」
「予想にしかなりませんが、この世界、この星が呼んでいた…かもしれません」
星。
その発想は巨大すぎて、もはや神の領域。
「私、それ、完璧、救世主様です!」
などと自分で言ってみる。
「……星を生体とする説はあります。ベルソレイユが生体となっているように、この世界では否定できるものではありません。ですが、声……あるのでしょうか?」
それを言われて、なぜか私は頭の中で地球に唇くっつけたものをつくってしまった。
嫌すぎる。
モンスターすぎる。
ベルソレイユのような人間の姿ならまだ馴染める。
……会話、できるんだろうか?
ベルソレイユと。
できるなら、どうしてほしいのか聞いてみたい。
もしも星の声が聞こえるのなら。
救世主、本当になれるかもしれない。
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