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しとしとと雨が降る中、昇は人恋しさが募り堪り兼ねて、「春雨じゃ濡れて行こう!」とばかりに愛人に会いに出かけ、彼女の住むアパートへ向かって靄った都心のスカイラインをバックにBMWを飛ばした。
そんな時、昇はシューベルトのセレナーデをかけて心の中を美しい蝶や花で彩らせ優雅な気分になりながら彼女を想うのだ。
しかし雨が段々激しくなって来て心穏やかでなくなりワイパーによって生み出された飛沫がサイドウィンドウを掠めて寂しげに流れて行くと、昇は雨粒を圭子の涙のように思い、「圭子!待ってろ!今行くからな!」と心の中でパッショネイトに叫ぶのだった。
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