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プロローグ
ロミオは震えていた。
無言のまま……薄く開いた口から粘膜が乾いて行くのを感じる。
喉がヒリヒリと渇き、皮膚の表面は薄く汗を浮かべながら、張り積めて行くような感覚があった。
後ろ手に縛られた縄は腕に食い込み、痛みを感じたが、今は、そんな事はどうでもいい。
腕の痛みよりも、何よりも………
今、彼らの置かれた状況の方が問題なのだ。
男は、言った。
「お前達には『選択権』がある。
今、此処で死ぬか………
我々の家畜として生き永らえるか、だ」
獲物を狙うライオンのように………
目の前を左右に往復しながらロミオ達、3人を見下ろす。
仮面に隠れ、見えない筈の眼差しは………
それでも、舌舐めずりをしているかのような
鋭さがあった。
「ふざけるなっ!
人間を何だと思って………」
ズシュッ――――…………!
聞き慣れない音………
それは、肉の塊を果実のように踏み潰したような………
濁った破裂音を立て、隣の男の頭が潰された。
見慣れない武器で……焦げた臭いを漂わせ、
背中から沈む男………
それは、ロミオの兄だった。
開いた瞳孔に兄の遺体を焼き付けながら、叫ぶ事も、泣く事も出来ず、只、小刻みに震える事しか出来ない野鼠ロミオ………。
ロミオの右隣に居た、太った男は、ロミオの兄の死にショックを受け、小便を漏らす。
「…………ぁ………あ゛…………」
すえた臭いが立ち上ぼり、それが目の前の男を不快にさせた。
「…………汚ない豚だ。
お前は、うちの家畜以下だな」
ズシュッ――――………
再び、不快な音が響いた後………
右隣の男も床に突っ伏した。
静寂の広がる中―――――
ロミオは1人、ライオンの前に取り残された。
黒いコートを羽織り、顔の見えない肉食獣は
俯き震えるロミオの耳元に顔を寄せ、低い声で静かに囁く。
「………さぁ、選べ。
お前は『自由』だ」
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