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それから、ふた月ほど経っていた。
爺様は婆様を労り婆様は爺様を助け変わらず細々と生活を続けていた。
生活はもちろん楽ではなくぎりぎりであった。
毎日必死に働いて、少年の事を思い出すことも少なくなっていた。
そして、厳しい冬も空けようとしていた頃。
爺様の営む靴屋で商品にするための材料さえも残りわずかとなっていた。
すでに出来上がっている靴が3足、残りの材料でも2足…3足作れるか…
爺様の脳裏にこれまでかもしれないなと諦らめも生まれ始めていた。
そんな爺様に婆様は変わらず笑顔で接した。
「婆様や、辛い思いをさせてしまってすまないね。」
「何を言うんですかお爺さん。
私はあなたの優しさが好きなのですよ。
優しいあなたと一緒に居れることが幸せですよ。」
最後は一緒に…おのずとそう考えていた。
二人は無理をすることをやめて、その日は残りの材料を残し早めに就寝することにした。
同じベッドで手をつなぎお互いのの温かさを感じながら眠りについた。
翌朝もゆっくりと目を覚まし、遅めの朝食をとった。
日に日に食べ物も減っており、パンをひとかけらと白湯を頂いた。
それでも二人は 久々に寝坊しましたね など話しながら笑顔で和やかであった。
それは最後を意識した老夫婦の静かでゆっくりと流れる時間であった。
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