退職の心得【完結】

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 もしかしたら、あなたに気を遣われて、あなたをお昼に誘う方が現れるかもしれません。「今更何を」と言わず、その場合には乗って差し上げましょう。同僚や先輩などいつも決まった相手と食べている場合には、普段通りに。今後の話を聞かれても、あまり明瞭に答えぬことをお勧めします。  未来に期待を馳せる者の表情は、残された側にとって時に毒になり得ます。  サバイバルクイズ番組で勝ち抜けた勝者を見送る負け犬の表情を思い出してみましょう。  さて、午後からが勝負です。  お色直しの時間到来。  オーラを変えるのです。 「誰も頼むな」から「帰りたい」へと!  周囲の片づけを本格的に開始します。  14時からは机を拭き始めましょう。『14時』が最善。これは、統計と経験によって裏打ちされています。午後一から拭くのは先走り。帰るためにお昼を食べに来たのか、と思われかねません。  あなたに仕事を頼む人は激減するはず、いえ、いないはずです。  空気の読めない輩が若干名現れた場合には、エスケーワイ、と内心で黒十字を切りつつ、誠心誠意対応しましょう。  どうせ明日から顔も合わせぬ人間ですから。
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