0人が本棚に入れています
本棚に追加
1話 モテない男子 持内くん
モテない男子と高嶺の花 第1話
ピピピピピピピピ
朝日が窓から差し込み、部屋は明るく照らされ、今日も6時にセットしてある目覚まし時計をだるそうな手つきで止める。でもやはり布団から体を起こすのは辛いもので、ついつい居座ってしまう。
「そろそろ起きないと」
自分を戒めていざ起きると、カレンダーが不意に目に入る。
4月。そう今日は中学校の入学式だ。そして俺にとっては新たな友達との出会いの日でもある。
普通の小学生なら公立の中学校へそのまま上るのだが、俺の場合私立へと進んだ。大したところではないけれど。
ー早く起きてきなさーいー
俺があれやこれや考えていたら母親からキーンとした声が発せられた。俺はすぐに1階に降りて食卓につく。
「入学式くらいちゃんと起きなさいよ」
母が朝ご飯を置きながら言ってくる
「別にいいじゃん」
俺はぶっきらぼうに答える。これは本心だ。
「まぁそれくらいの方がありがたいわ」
母は苦笑いを浮かべながらさらに続ける。
「由紀なんて昨日から『もうお兄ちゃんと同じ学校行けなーい!』って泣いてたんだから」
由紀というのは俺の2つ下の妹で、「持内」という苗字に似合わず、学校ではお姫様のようにモテている。ったくバランスがおかしいだろうよ。
そんなことを考えている内に母は俺の入学式に来ていく服とかを準備しに行った。
何やら気合を入れて準備しているらしい。
すると二階からドタバタ降りてくる音がしてきた。
「お兄ちゃんおはよー」
由紀だ。今日も元気だなと少し皮肉混じりに言っても、うんありがと、と返すほどのやつだ。
「お前今日も元気だな」
「当たり前でしょ、朝イチでお兄ちゃんの顔を見れるんだから」
そう由紀は目を輝かせながら言っている。
どんだけ俺を美化してるんだか...。
「はぁ、もうお兄ちゃんと同じ学校に行けなくなるね」
「別にそれくらいいいだろ」
「良くない!私にとってはお兄ちゃんと同じ学校に行くことは生きることなの!」
言い忘れていたことが一つあった。
そう由紀は自分でいうのもなんだが俺のことを好きらしい。いわゆるブラコンというやつだ。
「はぁ、お前そろそろ俺を好きになるのはやめろよ」
すこし呆れた口調で返してみる。
「うわ、恋する乙女に向かってそんなこと言うなんて...だから彼女もできないんだよ?」
由紀はニヤニヤしながら俺を挑発するような口調で反撃してくる。
「まぁモテない方が私にとってはライバルが少なくなるからいいけどねっ」
そう言って妹は自分の牛乳を飲み干す。
そして妹も身支度へ向かった。
最初のコメントを投稿しよう!