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ミサの母親はしばらくの間、気を失っていた。娘の様子がおかしくなり、しばらく見ていなかった人形が――まるで自らの意思で現れたのだから、無理もない。
母親が目覚めたときには、先ほどの出来事が嘘のようにいつものミサに戻っていた。
――さっきのは夢だ。きっと悪い夢に違いない。
母親は願望を込めて、そう思うしかないと信じ、いつも仕事が忙しく帰りの遅い夫に相談することをためらった。
――それがいけなかったのかもしれない。
二日後の深夜二時、体に重みを感じ目が覚めた。虚ろな目のミサが上に乗っている。
「邪魔なの」
その口は動いていない。
「ミサちゃんはアタシのお人形よ。だからあなたは邪魔なの」
母親は耳元に小さな影を感じた。
ミサは虚ろな目から涙を落としながら、母親の首に手を伸ばした。
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