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それからほどなくして父親が帰ってきたとき、家の中は荒れていた。
荒れていたといっても元々物が少なく、それほどひどい状態ではなかった。
しかし、ミサもミサの母親も異様だった。
ミサは泣いている。座り込んで母親にずっと謝りながら泣いている。
母親はただ一点を――意識があるのかどうかすらわからないくらいにぼーっと見つめ、ミサの声にピクリとも反応しない。
髪も服も乱れている。まるで強姦されたようだった。
――どうした。
――何があった。
――大丈夫か。
すぐに駆け寄ったがやはり反応はない。
その後母親は精神を病み、入院した。
父親は一週間仕事を休みミサと過ごしていた。その間にミサにおかしなところは無く、生活のためにまた働きに出ることにした。
ミサは一人で過ごさなければいけないことを恐れていたが、やむを得ない。
抱きついてきて離れないミサをそっと優しく離し、知らない人が訪ねてきても返事しちゃいけないよ――と言ってから鍵を閉めた。
仕事を早めに切り上げて帰宅したが、その時にはもうミサの姿はなかった。
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