傀儡――にんぎょう――

　警察の捜索もむなしく、ミサが見つかることはなかった。
　ミサがいなくなる日の夕方、ミサと玩具屋の店主が一緒に歩いているのを複数人が目撃している。
　同日に店主も行方知れずとなったので、警察は、店主が誘拐したという線が濃厚だと見ている。

　さて、玩具屋の店主が消えたその日から、玩具屋の陳列窓には人形が三体並んである。
　左はブロンドの髪、右は赤い髪、そして真ん中には黒い髪の人形が、外を通る人をおかしそうに見つめている。
　その人形たちは不思議なことに、何年経ってもわずかな埃(ほこり)すらかぶっていない……。

――これであの人形たちの話は終わりです。もっと怖がってくれると思っていたのですがね……。爺の話し方が下手だったからでしょうかね。
　夕方近くになるとこの辺りにミサと玩具屋の店主が、当時と寸分違わない姿で現れるといった噂もあるのですがね。
　さすがに現実味がないでしょう。やはりただの噂でしょうね。