隠れん坊

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「あたし、この子にするわ」  五歳くらいの活発そうな可愛い女の子が、玩具屋に置いてある三体の人形の中から一体を抱えて頬ずりをした。  それはその女の子にそっくりな黒髪長髪の可愛い人形だった。  それから毎日、女の子は人形と過ごした。 一緒に起きて、一緒に食事を摂り、一緒に遊んで、一緒に銭湯へ行き、寝るときには子守唄を歌ってやった。夢の中でもよく一緒に遊んだ。  或る朝、いつもとなりに寝ているはずの人形がいなくなっている。女の子はすぐに叫んだ。 「あたしのお人形さんはどこ? どこへ行ったの?」  ちょうど朝食を作り終えた女の子の母親がそばへやってきた。 「さぁ、朝ごはんできてるわよ」 ――あたしのお人形さんはどこ? 「あなたももう大きくなったでしょう」 ――どこへ行ったの? 「そろそろお人形さんは卒業しないとね。さぁ、朝ごはん食べよっか」 「捨てちゃったの? あたしのお人形さん、捨てちゃったの?」  女の子は寝巻きのまま靴も履かず、ゴミ置き場まで駆けていく。  それは、複数あるゴミ袋の一番上に無造作に置かれていた。 ――見つけてくれて嬉しいわ。  女の子は、人形がそう話しかけてきたように感じた。
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