幕間、晴翔と佑

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幕間、晴翔と佑

「なぁ、頼むよ、晴翔兄ちゃん!!!!」  必死な様子で両手を合わせて従兄弟の佑がお願いごとをしてくる。  晴翔は昔を思い出して懐かしいと感じながらも、しかめっ面を作った。 「叔父さんたちが反対してるのに、俺がどうこうできるわけないだろ。諦めろ」 「でもどうしても金が要るんだよ!!」 佑は貯めていた小遣いを新しいバスケットシューズに注ぎ込んだ。それを恋人の真矢に話したら、「いいな!俺も新しいやつ欲しいから、誕生日プレゼントに頼もうかな」と、そう言ったのだ。そこではじめて、佑は真矢の誕生日が近いことを知った。  もちろん、真矢は親に誕生日プレゼントを頼むつもりで言っただけで、佑から何か貰おうなんて1ミリも考えていないだろう。だが、佑はどうしても真矢にプレゼントを贈りたかった。 「バイトの前に、期末、ヤバいんじゃないのか?お前、勉強してんのか?」 「うぅ~、で、でも中間も陸に教えてもらって赤点は回避してるし!期末だって……」 「バカ、お前みたいな脳筋にバイトと試験勉強の両立なんて器用なこと出来るわけないだろ」 晴翔の意見はまるっきり佑の両親の言い分と同じで、佑は泣きそうになりながら頭を抱えた。 「じゃあどうしたらいいんだよ?!」  はぁっとため息を吐いて、晴翔は頭をがしがしと掻いた。 「しゃーねーな、俺が手伝ってやるよ」 昔から、この歳の離れた従兄弟に弱い晴翔は、今回も根負けしたのだった。  結局、バイトを却下された佑は、プレゼント用のお菓子作りを晴翔の奥さんに手伝って貰うことになった。 「手伝ってくれるの、晴兄じゃなくて姉さんじゃん」 不満を零す佑に、晴翔はげんこつを落とした。 「うるせぇよ。材料費は俺もちだろうが!」  週末、クラブの終わった佑は、3歳になったばかりの晴翔の娘を抱き上げて、ぶんぶんと振り回す。キャーっと喜んでいる娘に、晴翔の表情も柔らかいものになった。 「お待たせ、佑君。じゃあ始めようか」 シンプルな生成りのエプロンを手渡しながら、晴翔の嫁がキッチンを指差した。 「やぁ、もっとして!もっとグルグルして!たぁくん」 ワガママを言う娘を佑の腕から引き剥がして、晴翔は「頑張れよ」とエールを送ったのだった。
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