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それぞれの春
「え、本気で言ってんの?」
2年になっても同じクラスになった幼馴染、佑のセリフに、陸は本気で驚いた。
「マジだって、こんなん他に聞けるやついないだろ?陸にしか聞けないんだ、だから頼む!」
佑の相談事は、陸の想像の範疇を超えていて、ひたすら混乱する。
「ちょっと待ってくれ。……俺が誰かと付き合ってるって、そんなことお前に言ったことないよな?1度もないよな?なのになんでそんな話になるんだよ?おまけに、C組の東野院と付き合ってるって?……いつの間にそんなことになってたんだ?」
ひたすら驚いている陸の反応に、頭がいいくせに相変わらずどこか抜けてるなぁと、佑は思う。
「何年も腐れ縁やってたら、見ただけでお前の秘密なんてわかるの。だから頼む!俺に男同士のやり方を教えてくれ!」
休日に、わざわざ家までやって来た佑の頼みごとに、最初は驚いて、そして、だんだん腹が立ってくる。
「お前は昔っから無神経なんだよ!お前なんかヤル前に東野院に振られちまえばいいんだ!」
「ひでぇな。何怒ってんだよ、陸?」
酷いのはお前の方だと、陸は言いたかった。触れて欲しくても、聡一は決して触れてくれない。キスをしたことさえないのだ。それなのに、東野院とヤリたいからやり方を教えろなんて、無神経にもほどがある。
「あ、もしかしてまだなのか?」
「逆に、なんで俺がやったことあると思ったんだよ?」
「や、だって、あいつは大人だし、手が早そうだし?」
「あいつって……、俺はお前に何も言ってないのに、お前は確信してるわけね。……一応聞くけど、誰にも言ってないよな?」
底冷えのする視線に、佑はぶんぶんと勢いよく首をふる。
「もちろん、誰にも言ってない!真矢にだって言ってない!けど、晴兄は知ってるかも……」
「……晴翔さんは、俺に何も言ってきたことないぞ」
「あぁ、そりゃ、言ったら陸が困るって知ってるからだろ」
「…………」
お前も晴翔さんを見習ってくれ、と言いたかったが、こいつに言っても無駄だと、陸は諦めた。
佑は陸がまだやってないことに少しだけ驚いて、それ以上に納得もしていた。なんせ真面目な優等生なのだ、相手があの大島でも、簡単に手を出せないのかもしれない。
佑がわざわざ陸を頼ったのは、本音で話をしたかったからだ。誰にも打ち明けられずに悩みを抱えたりしてないか、陸を心配してのことだった。
「それで、やったことなくてもやり方くらい知ってんだよな?」
「……」
陸は真面目な性格ゆえに、疑問に思ったことは調べずにいられない。
佑はそんな陸の性質を、よく理解していた。
しぶしぶと、陸は1枚の紙を引っ張り出してきた。
そこにはいくつかのURLらしき物が書いてあった。
「それやるから、自分家で勉強してくれ……」
溜息を吐き出しつつ、陸はそれを佑に押し付けた。
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