パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 6

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「でも」  視線を落として、行人は希望を引き出すように呟いた。 「変わったりしないかなって」  四谷と自分の関係が変わったように。いつだったか高藤にも妙な期待はするなと言われたことがある。ああいうタイプとまともにやり合っても、行人が負けるだけだと。でも、同じ時間を生きている人間なのに、本当になにも変わらないのだろうか。  言葉にしてしまってから、自分でも堂々巡りのことを言っているなぁと呆れたけれど、同じように思われてしまったらしい。舌打ちを呑み込んだような溜息がひとつ響いて、向原が言う。吐き捨てるような調子だった。 「時間の無駄だろ。相手に変わることを期待するのは」 「え……」 「自分が変えるしかない」  勝手には相手は変わらないから、自分が変えるしかない、ということだったのか。相手は変わらないのだから、自分自身を変えるしかない、ということだったのか。わからなかったけれど、それ以上を問うことはできなかった。 「あれ、榛名。本当に待ってたんだ。しかも、踊り場」  上から降ってきた四谷の声に、はっとして顔を上げる。ひとりに戻ってからつい考え込んでしまっていたらしい。階段を下りてきた四谷に「どうかした?」と問われ、行人はぎこちなく笑った。
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