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気が付いたとき、目の前は真っ暗だった。
「えっ」
その光景に俺は驚き、あわてて体を起こした。
「うっ」
起き上がった瞬間、頭に痛みが走った。酒がうまい具合にまわっていた。気持ち悪さに口を抑えた。そして頭を動かさぬよう、ゆっくりと、あたりに目をやった。全てが、黒で統一されていた。一瞬、目を閉じているのかと思い、ぱちぱちと何回か瞬きをしてみたが、目ははっきりと開いていた。
目がおかしくなったのだろうか。俺はあわてて自分の手を目の前にやった。しかし周りが暗いせいか、目の前にあるはずの手すら、目に入らなかった。
「おい、ここは」
俺がそう声を発した瞬間、風が吹き抜けるような轟音が空間に響き渡った。そして地面がゆっくりと動き始めた。
「えっ」
遥か上空にほんの少しだけ明かりが灯され、目の前が少しだけ見えるようになった。自分の手も地面に置かれているのが見えて、俺は少しだけ安堵の息をもらした。そしてその地面は音を立てて、動いていた。灯りがどんどんと後ろに流れて行った。
何が起こったのかわからず、俺はしばらくの間、地面にしゃがみ込んでいた。
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