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風の吹きぬける轟音がまた響き渡った。しかし、今度は向きが変わらなかった。音がしてからも、地面は同じ方向に動き続けた。いつもと違う、俺はそれに驚き、少しだけあたりを見まわした。
また音が鳴った。今度もまた向きは変わらず、同じ方向に地面は進み続けた。
ひとつの方向に進み続けている。その事実に、少しだけ希望を見いたせたような気がして、顔がほころぶのがわかった。行ったり来たりでは、どちらにも進むことができない。どちらか片方に進み続ければ、いつか、出口までたどり着けるかもしれないと。
そう思った俺は、立ち上がることはひとまず後回しにし、今進んでいる方向に、よつんばいで進み始めた。時折、吐き気に襲われ動きを止めたが、何もしていないよりも幾分、気持ちが楽だった。
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