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その瞬間、からだが何かにぶつかった。俺はあわてて手を前にした。
目の前に壁が現れていた。その壁が俺の行く手を阻んでいた。
地面は変わらず動いている。けれども、壁が、俺の行く手を阻んでいた。
「おい、おい」
急に現れた壁に、俺は困惑し、思わず殴りつけながら大声で叫んだ。
「ふざけんなよ、おい」
また轟音がなった。地面が今度は後ろ向きに動き、壁からからだが遠ざかって行った。
「おい」
せっかく見えた希望の光から遠ざかっていくような気がして、俺はあわてて走り出した。しかし、地面の動きを相殺するだけで精一杯だった。久しぶりにこんなに走っている。息を切らせながら、俺は自分の日頃の運動不足を呪った。
轟音が、また俺を白の壁にむかって押し流した。向きが変わったことに安堵した。現れた壁はなくなっていた。俺は邪魔するものはなくなった。俺はどんどんと、白に向かって突き進んでいった。もうすぐ、もうすぐ端までたどり着けるだろう。
そう思った瞬間、また轟音が鳴り響いた。壁が現れたときのように、いつもと少し違う感じがした。それが気になり、俺は上に目をやった。その瞬間、黒が多かったはずの視界が真っ白に染まった。
「えっ」
そう声を発した瞬間、自分のからだが、ふわりと浮きあがった。
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