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「え、」
反射的に出た声は自分でも驚くほどにか細かった
それは予想外からかちーちゃんの普段よりもいっそう低い声からか
はたまたどちらもか
ちーちゃんの声はひどくただただ冷たかった
例えるならトトちゃんと一緒に生徒会の備え付け冷蔵庫に入っていたケーキを勝手に食べたのを見つかったときぐらいに
普段は柔らかく耳障りのいい落ち着く声は剣のように鋭い
生徒会が来たおかげで騒がしかった食堂内は、特別声を張っていないにもかかわらず、ちーちゃんの普段とは違う声で静まり返っていた
俺は冷や汗が止まらず他からみれば、もしかしたら顔が青くなっていたかもしれない
転校生君ですらちーちゃんに怖じ気づいている
こういうときこそ王道転校生らしく騒いでよ、と転校生に理不尽な念を送るが当然伝わるわけもなく
ただ、静寂が場を支配している
何も出来ずにただ頭を俯かせていると
ちーちゃんの指先が顎に触れ
そのまま強制的に顔を上げさせられ視線を固定させられた
「スズ、なにか言ったらどうですか。」
顔を上げられたことにより目線が上がる
瞬間、ちーちゃんの人形のように美しい顔が目の前に広がった
あまりに近い距離だけれどちーちゃんは無表情でピクリとも動かさない
からかえる雰囲気ではなかった
「な、なんで…?」
みっともないほどに小さくか細い声が出た
それを見たちーちゃんは少しだけ口角をあげたように見えた
と思ったら、ずいっとより顔を近づけ耳元で言った
「嘘ですよ」
その言葉を区切りにちーちゃんは顔を緩ませた
俺は反応することができなかった
告げられた声はさっきまでの冷たかった声ではなく暖かい声でそれが
言葉が真実だと肯定している
怒っていなかった安心もでているが、何故やったのかという怒りもあるし
会長たちもそれを知っていたのかという疑問もある
様々なことが頭を渦巻きパンクしそうになった
さっきまで無意識に張っていた気が緩むのを感じフラッと体から力が抜ける
それを予測していたかのようにちーちゃんは涼しい顔で俺を支え
そしてちーちゃんに寄りかかった俺の頭を優しく撫でだし、告げた
「お騒がせいたしました。もうすぐ授業が始まるので至急教室にお戻りください」
その声で、ここが食堂であることに気づいた
と同時にどうしようもない羞恥心が現れた
他の生徒に自分の情けない顔が見られないようちーちゃんの肩に深く顔を入れる
そんな俺の腰を抱いてちーちゃんは、食堂の2階エリアへと俺を引っ張っていった
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