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「あ〜。そういや、ネットで話題になっていたな。女子の間で人気だとか」
「女子ってそういうのが好きだよな〜」と、碓水に納得されてしまった。
恋愛や御守りに興味がなさそうな、男子である碓水でさえ御守りを知っているという事は、よほど人気なのだろう。
「そうなの? 私の友達も御守りを買いに行ったの。私は雨がやんだら行くつもり」
「ふ〜ん。君は行かなくていいの?」
「私?」
水莉がキョトンとすると、碓水は頷いた。
「そう。君だって女子なら気になるだろう。恋愛に効くっていう御守りを」
碓水の言葉に、水莉は考えた。
「そうね……。気になるといえば気になるし、気にならないといえば気にならないかな。恋愛に興味無いし」
水莉の言葉に、碓水は一瞬目を見開いた。けれども、すぐに先程までと同じ笑みを浮かべたのだった。
「ふ〜ん。なら、何が興味あるんだ?」
「そうね……。やっぱり、ゲームかな。ゲーム機やスマホがあれば雨でも遊べるし」
雨女だけあって、水莉は室内で遊べる遊戯が得意だった。とりわけ、一人でも遊べる携帯ゲームやテレビゲームは好きだった。
「珍しいな! なあ、何のゲームが好きなんだ?」
水莉はいくつかのゲームタイトルを挙げた。人気の携帯ゲームから、コアなテレビゲームまで。
「その携帯ゲームなら、俺もやってるよ。最後が結構、難しいよな」
「あっ、やっぱりそう思う!? 私も難しいと思っていたの! 特定の武器を持っていないと、攻略に苦戦するんだよね!」
「その武器ってあれだろう? 最初の町で隠しアイテムと交換する……」
水莉と碓水の話はつきなかった。
水莉もここまでゲームの話をしたのは始めてだった。水莉の周りには、ゲームに興味のある女子はいなかった。
水莉の身近にいる女子は大抵、恋愛やファッションに興味を持っていて、男子は男子で独特の世界観を持っていて近寄りがたかった。
やがて、水莉は肩を落とす。
「やっぱり、変だよね。女子がゲームなんて……」
水莉も女子ならば、ゲームよりも、もっとオシャレに気を使うべきだろう。
新しい化粧品や今年の流行りのファッションを調べて購入したり、男子にモテるような髪型を研究したり。
水莉だってわかっている。けれども、興味を持てないのだった。
すると、碓水は水莉から目をそらしながら、答えた。
「俺は、男にモテようと気取っている女子よりも、ありのままの自分を見せている女子の方が好きだけど」
「えっ?」
水莉が振り向くと、碓水は顔を背けてしまった。
「つまり、無理に着飾るよりも、本当の自分を見せる方がいいんだよ! 男子にモテようと意識している方が馬鹿馬鹿しいと思う」
「どうせ、付き合ったら本性はバレるんだからさ!」と、碓水はやまない雨音に負けないように叫んだのだった。
その言葉に、水莉の心は軽くなったのだった。
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