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「そうだよね。やっぱり、本当に自分を好きになってもらいたいなら、本当の自分の姿を見せるべきだよね!」
「ああ。そうだな……」
耳まで真っ赤になりながらも、碓水は水莉の言葉に頷いたのだった。
「だから、自分が雨女だからって、落ち込む必要も無いんじゃないか。自分は雨女だって言って、雨女の自分を見てもらえよ」
きっと、水莉が雨女だという事を気にしていると思ったのだろう。碓水の気持ちが嬉しかった。
「ありがとう。気遣ってくれて」
「そ、そんな大した事じゃねぇし!」
ますます照れる碓水が微笑ましかった。水莉は声を上げて笑ってしまったのだった。
「俺も生まれついての雨男だけど、一度も雨男に生まれた事を後悔してねぇし!」
「そうだね。私もこうして同じ雨男の碓水君と出会えたのなら、雨女で良かったと思ってる」
水莉が雨女じゃなければ、碓水が雨男じゃなければ、二人はこうして出会う事は無かっただろう。
この時ばかりは、水莉は自分が雨女だという事に感謝をしたのだった。
雨はやむことなく、絶えず降り続いていた。水莉は気にしないが、このままだとびしょ濡れの碓水は風邪をひいてしまうかもしれなかった。
「ねぇ。寒くない? 服がびしょ濡れだけど、風邪を引いたりは……」
「大丈夫大丈夫! 俺は健康が取り柄だから」
碓水はそう言うが、水莉は心配であった。すると、水莉は「そうだ!」と思いつくと、リュックサックの中を探ったのだった。
「もし、よければだけど。私が持っているカイロを使って」
水莉はリュックサックの中に入れていた使い捨てカイロを取り出すと、碓水に差し出した。
碓水は受け取っていいのか、カイロと水莉を見比べていた。
「いいのかよ。俺が貰っても」
「うん。碓水君から素敵なお話を聞かせてもらえたから。そのお礼だと思って受け取って欲しいな」
水莉が念を押すと、碓水は迷った末に、カイロを受け取った。
「……ありがとう」
「どういたしまして」
水莉は笑みを浮かべたのだった。
「あのさ、君のれ」
「あっ、いたいた! 水莉、お待たせ!」
碓水が何かを言いかけた時、水莉の友人達が買ったばかりと思しきビニール傘を頭上で振りながら戻って来た。
「ごめんごめん。傘を買ってたら、レジが混んでてさ」
「もう。御守り買うのに時間がかかったからでしょ!」
「でもでも、その代わりに水莉の分の御守りを買ってきたから! 私達と色違いのお揃いだよ!」
友人達は水莉の分のビニール傘と御守りを渡して来た。
「ありがとう。二人共」
「じゃあ、もう行こうか?」
「うん。あっ、ちょっと待ってて!」
水莉は友人達を待たせると、水莉の隣でスマートフォンをいじっている振りーーどう見ても碓水の指もスマートフォンの画面も動いていなかった。をしている碓水に向き直ったのだった。
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