涙雲の向こう側

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「おうおう、ここをどこだと思ってる。 おい、そこのボーッとしてるお前だよ! お前」 「はぁ!?何だよ、口が悪いな。それでも裁判官かよ 」  ハッとした被告人。 悪辣な声掛けに、言い返そうと正面を向いたが薄暗くてはっきりと見えない。しかし、先程の裁判官ではないことは確かのようだ。被告人の人生において全く見たこともない大きな男の姿が裁判官が座っていた席にいた。  被告人が慌てて周りを見ると、薄暗くとも傍聴席の人々、検察官や弁護士等、全ての人が消えていた事がわかった。 「……何だ、どういうことだ!?ってか、誰だお前 」 大男が大きな声で、 「全く口の減らねぇガキだな。まぁ、お前は地獄行き決定だから、これ以上話を聞く事もあるまい、その者を引っ立てい 」 いきなり二匹の鬼が現れ、両脇を硬めた。被告人の体はびくとも動かない。 「ちょ、バカ、止めろよ。こいつら、何だよ!触んじゃねぇ。これは暴力だ。絶対訴えてやるからな!」 被告人の抵抗虚しく、鬼は容赦なく引きずっていく。 「バカやろう!!マジで、ふざけんじゃねぇよ 」 被告人の焦った声が場内に響く。 すると、大男の呆れた大声が響いた。 「全く、お前は誰に訴えるんだい。あっちの中じゃ誰もお前の話なんか聞きゃしないだろう。そこで、お前のそのひね曲がった性根を叩き直してこいや。地獄の苦しみってのをよう」 被告人は物々しい扉の前に連れて行かれた。 その扉の奥は…… 地獄。 鬼に引きずられ、悲鳴を上げる被告人が扉の中へ入り扉が閉まった。 大男がしゃんしゃんと杓をふった。 「はい次。ざっと数百人はいるから、さっさと終わらせようぜ」 ドォーンと再び、大きな音がした。 次の被告人か姿を現した。 大男が何やら手帳を繰っている。 「全く、お前もか…… 」 状況が掴めず、暴れ喚く被告人。 大男がため息をついた。 「以下同文だな」 鬼が二匹、暴れる被告人を取り押さえ先程の扉の中へ……
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