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≪錆都≫で、≪発信≫の仕事ができるものはごく限られている。
彼らは特殊なカードを持っていて、それが≪電波塔≫に入る鍵だった。
≪電波塔≫以外からの≪発信≫は全て禁じられている。
≪発信≫するものがどのように選ばれるのか、誰も知らない。
実際、≪錆都≫の人々は、そんなことに一切関心を抱きはしなかった。
誰がどのように、何の仕事に選ばれるのかなど。
彼自身もそうだ。
そしてもう忘れてしまった。
いつどのように自分がそこに選ばれたのか。
この街では、いろいろのことは忘れられなければならない。
シンジュは自分が十九歳だという年齢を覚えているが、それを確信するに足る記憶は何も持っていない。
そしていずれは、そのことに対する違和感すら忘れてしまうだろう。
大人たちは、皆そうだ。
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