思い込み。

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その人は、キツネの仮面で顔を隠していた。 傘はピンク色で、どう考えても女性用の傘だった。自分の肩幅ほどしかなく、傘から滴る雫に肩をびしゃびしゃに濡らしていた。 「きゃっ!」と声がもれ、尻餅をつく。 すると男はしゃがみ込んで、その傘をこちらに差し向けて、雨が当たらないようにしてくれていた。 ほんの小さな気遣いだが、これほど心温まるのは久方ぶりだ。 ――ときめき――と言うのだろうか?
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