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『あなたの色は、世界でただあなただけのものだよ。尊いって思う理由なんてそれだけで十分なの』
そんなの、耳障りの良い戯れ言だと思ってたのになぁ。
不機嫌そうに眉を顰めながらも握った手をきゅっと握り返してくれる少年を隣に見下ろしながら、おれは貴女の言葉を思い出していた。
やっぱり笑ってくれているだろうか。そうだろうな。そうだといいな。
指と指を絡めようとすると流石に抗議するように睨みつけられた。その顔すらも愛おしくて頬を緩ませると、困ったように彼は溜め息を吐く。
諦めたように緩んだ指の間にするりと自身の指を絡ませるともう一回、きゅっと手の力を強める。彼もまた溜め息を吐きながらも、手を握り直してくれる。
そんなんだから調子に乗っちゃうんだよ。もう知らないからね。
なるべく抑えようとは思う。まぁ…出来る限りね。きみに嫌われることは絶対にしたくないとは思うよ?でもさ、先に謝っとくね。
やっと掴んだ温もりは、この手はもう、離してやれないと思うんだ。
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