第3話 バレンタインデー

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 と、そんなことを言う声が聞こえてリリスは声の方を振り返る。すると、その男はそろそろと小さく手を挙げていた。 『おう火野刃、どうしたよ? なんかわからんかったか?』  火野刃。この事件の中心人物。 「いや、なんていうかさ……今のが『問題』なのか?」 「(……何を言ってるの、この男)」  そんなものさっきからやっているのだから分かりきっているだろうに、彼はそんな素っ頓狂なことを言っている。なにかの作戦だろうか。 『なんだなんだ? 問題が難しすぎるってか? 悪いがご主人の友達だからって優しくはできないぜ? 答えられてるやつがいるんだから答えられないやつが悪い──』 「いや、そうじゃなくてさ……」  そこで彼はバツが悪そうに頬を掻きながら言う。 「……今の『簡単な質問(・・・・・)』が、『問題』と思っていいのかって聞きたいんだが」 『…………は?』  その一言にポッピーも、辺りの全員が絶句する。 『……は、はは! 簡単とは言ってくれるな? ならせっかくだし最難関の問題を出してやる! 問題だ! 週刊マガジンにて美瑛ちゃんが特集された回数は全部で何回──』 ──ピンポーン。 「23回」 『…………へ?』 「だから、23回だ。因みに初掲載は12号の時で、そこから連続3回掲載されたんだけど、そこからしばらく間が空いて2ヶ月後に1回、それから──」 『ちょ、ちょっと待て!』  刃の言葉を遮ってポッピーが止まるように言う。 『……お、お前、全部覚えてんの?』 「……? 何言ってるんだポッピー。ここにいるのは美瑛ちゃんのファンの代表なんだろ?」 『あ、あぁ。だがそれが何──』 「そんな基本的なこと(・・・・・・・・・)、間違えるわけないじゃないか」 「…………」  その刃の一言に、いよいよ会場は静まり返った。それは客だけではなく、 「(……あの男、何を言ってるの?)」  リリス達参加者もだった。さっき感じた疑問と言葉は同じだが、その内容は大きく異なる。 「(全て覚えているだと……そんなこと、出来るはずがありません。いくら好きな人の事とはいえ、彼女が出るメディアは雑誌やラジオ、テレビなど多岐にわたる。その全てを暗記するなんて……)」 『い、いや、偶然って可能性もあるしな! もう1回最難関を出させてもらうぜ! 問題だ! 2年前に放送された深夜番組『とくダネっ!』第15回にて話題に──』 ──ピンポーン。 「ネズミ柄」 『…………へ?』 「話題になった着物の柄だろ? あの回で話題になったのなんてそれしかないし」
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