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「…………(ジーーーーーー)」
「「…………」」
瞬間、2人してその視線に気がついてしまった。
「お、おはよう、藍」
「あ、藍ちゃん、おはよう」
「アイ!」
火野藍。ひょんなことから刃の家にお邪魔する居候。見た目は5~6歳といった所だが、実は色々と不思議な子だ。
『おはようございます、パパ!』
刃の頭に響く声、これもその不思議の一つ。この声は刃と光にか聞こえない藍の心の声、所謂『テレパシー』というものだ。
いつからか分からないが、こんなものを藍は使えるようになった。おかげで助かったことも多いが、今のこの現状においては……。
『なにしてたの?』
「え、えっとな……これは、その……」
困った。ただでさえ、なぜこの家に皆が住んでいることすら藍はよく理解していない。どう伝えたらいいものか。
「……藍ちゃん。私達ね、今『嬉しい』を共有してたんだよ」
と、刃が悩んでいると横から美瑛がそう口にした。
「……?」
「共有って言っても分かりにくいかな? 藍ちゃんは刃君に抱きしめられたら嬉しいでしょ?」
「アイ!」
手を挙げて肯定。
「私も、それと一緒。嬉しいは皆で、ね」
「アーイ!」
笑顔で応えた辺り、少しは理解しているのだろうか。
「というわけで刃君、はい」
「この流れで!?」
「別におかしくないよ? ほら早く」
目を閉じて「かもん!」と手招きする美瑛。そうだ、今なら何もおかしいことは無いし、平等に接すると決めている以上、遠慮もおかしい。
ならば、この彼女の柔らかい体を、俺は……!
「朝っぱらから、何をしてるのかしら? 2人とも(バキボキ)」
「……お姉ちゃん?(暗黒微笑)」
「「……せめて、命だけは」」
命だけは助けて貰えた。
✩
「全く……寄りによって藍の前であ、あんなこと……教育に良くないでしょ!」
「お姉ちゃん、反省してね」
「「はい、すいませんでした」」
光と亮に正座をさせられて説教を受ける刃と美瑛。蓮は出来た朝ごはんをせっせと机に運んでいる。
「……みんな、そのくらいにして、ごはん」
その一言で説教はストップ。全員は机に座って、
「それじゃあ、いただきます」
『いただきます』
「アーイ!」
6人で声を合わせて食卓を共にする。
どうしてこんな事になったのか、刃は出来たての味噌汁を啜りながら、際限なくまた年末に自身に起こった出来事を思い出すのだった。
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