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確かに妥当か若干過分すぎるけど。
実唯の言葉に微妙に傷つく。
幼い頃からよく知っている彼女は、昔から人に対してなかなか辛口だ。
「授業始まるぞー」
廊下から大きな声が聞こえて、1限の教科担当が入ってくる。
「なのは、戻りな」
実唯が私の席。窓際最後尾を見遣って、意味ありげに笑う。
「実唯、席変わらない?」
実唯を上目遣いに見ながら、半ば本気で訴える。
「嫌だよ」
けれど、実唯は私の訴えを無表情であっさりと切り捨てた。
立ち歩いていた生徒達がばらばらと席に戻り始めているのを見て、私も渋々立ち上がる。
そして実唯に背を向けると、とぼとぼと自分の席へと歩き出した。
自分の席にはあまり戻りたくない。
だって、ひとつ前の席に〈彼〉が座っているから。
机と机の間の狭い通路。
そこをすり抜けるどさくさに紛れて、ひとつ前の席の〈彼〉の横顔をチラ見する。
頬杖をついて黒板のほうをぼんやり眺めている〈彼〉は、私の視線に気づかない。
気づくそぶりすら見せない。
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