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席に着くときにカタンと音をたてて地味なアピールをしてみたけど、〈彼〉は全くの無反応。
「じゃぁ、プリント後ろに回して」
教壇に立った教科担当が、一番前の席の生徒にプリントの束を配っていく。
生徒達はその束から一枚自分の分をとって後ろの席の生徒に回す。
私のところにも、前の席の〈彼〉からプリントが回ってくる。
後ろを振り返らずに、プリントを持った腕だけを私のほうに伸ばす〈彼〉。
それを受け取るとき、偶然彼の指先と私の指先が触れた。
その瞬間、指先に微量の電流が走ったように痺れるのは私だけ。
私に触れた〈彼〉の指先は、ぴくりとも動揺を示さない。
そして、私を振り返らない。
彼女、いるんだ……
しかもこの学校のひとつ上の学年に。
ちょっと…いや。だいぶショック。
自分で自覚してたよりもずっと好きだったんだ。
胸を切り裂かれるような切なさに、そのことを強く思い知らされる。
〈彼〉と触れた指先。その手の平を握りしめて息を吐く。
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