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◇
ほとんど、一目惚れだった。
高校の入学式の日。
式が始まる前、私たち新入生はそれぞれの教室に集められた。
教室に集まった生徒たちには、廊下側から出席番号順に席が割り振られている。
吉永 なのは。
名字がヤ行の私の出席番号は一番最後だった。
初めての教室。
初めて会うクラスメイト。
ほとんどの生徒たちに、同じ中学出身の顔見知りがクラスに何人かはいるみたいだった。
けれど高校進学と同時に他県から引っ越してきた私には、そういう知り合いがいなかった。
唯一知っていたのは、紺野 実唯。
彼女は私の父方の従姉妹で、この高校への進学を決めたのも彼女の母親の薦めがあったからだった。
ひとりでも見知った顔があることに安心して、窓際最後尾の席に座る。
斜め前方に座る実唯を見ると、彼女は前の席の女子と親しくなったようで、楽しそうに話していた。
私も近くの席の子と仲良く……そう思って周りを見渡す。
けれど奇遇にも、出席番号順で窓際最後尾に座った私の周りは前も隣も斜め右前も、女子ではなく男子だった。
友達作り、出遅れる……
がっかりしていると、クラス担任が教室に入ってきた。
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