真夜中、助手席で

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 小一時間程で、車は自宅前に戻ってきた。市内を一周した程度だったろうか。  車から降り、名残惜しさに、 「お茶くらい飲んでってよ」  と誘ってみたが、 「大人みたいなこと言うじゃないか」  なんてはぐらかされただけだった。 「また、いつでも寄ってよ」  掠れてしまいそうな声を辛うじて押し出すと、父は黙ったまま小さく手を振って車を出してしまった。  小さくなっていくテールランプが滲み始める。堪えきれない涙がいくつも溢れた。
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