異次元より

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異次元より

『設備の非常用電力が枯渇しました。 設備の維持が出来ません。 設備が停止します。』 誰かが何処かで呼びかけている。 設備?停止? 声を聞く限り女性のようだが、無感情的で冷たい印象を覚える。 プシューと空気が抜けるような音とバチバチと何かが弾ける音がすると、光が溢れ出した 光は色付き、輪郭を帯びていく。 「おー……おー?」 鉄の塊が散乱し、 裂けた箇所から何かのコードが覗き火花を散らしている 「研究所…俺の……?なんで壊れて……あ。」 大量の酒を飲んで寝た翌朝のようにボヤけた頭にゆっくりと記憶が浮かんでくる 「……次元の研究をしてた。そして……あー。完全に思い出したわ。 確かこの辺に…。」 自分が入っていたカプセルから出て、隣のカプセルの前に移動する。 扉はさっき設備電源が落ちた時に開いたようだ。 中には15cm程の白い球体が入っていた。 それを取り出し、表面に着いている円の中心を軽く触る。 ピッ、という電子音と共に円に淡い光が灯って手から離れて宙に浮いた。 『起動しました。おはようございます。マスター。』 「おー、おはようモノ子。 いきなりだけど30秒くらいで現状説明して。」 『隣国と戦争が起きて軍に駆り出されそうだったマスターがごねにごねて、遂には作りかけの異次元転移装置を発動させて次元の狭間に研究室ごと閉じ込められ、何処かの次元に漂流するまで5000年くらいスリープなされる予定でした。 しかし、ログを確認すると発電機が壊れてしまい今は4500年目だそうです。 とうとうメモリが破損しましたか?』 「相変わらず少し酷いこと言うよな。 や、色々夢を見てどれが現実だったか分からなくなりそうだったんだんで確認を な。 で?重力があるって事はどっかに着いたんだろ?」 周囲のガラクタを避けながら出口に向かう。 モノ子も浮きながら着いてくる。 『500年程前にとある次元に漂着したようです。 それとマスター、モノ子の改名を求めます。』 「えー、かわええじゃん…。」 『ドブのような価値観ですね。』 辛辣な言葉が冷たい胸に染みる。 「あれ、おかしいな。確かに人間の感情に近いAIを組んでもらったはずなのに人の心が分からない言葉を使うよこの子。」 『御安心下さい。分かった上で言葉を選んでます。 私は不良品ではありません。』 「ははー、そりゃ安心だなーー。…ロボット三原則ちゃんと効いてるよね?」 ゴンッ、と後頭部に衝撃を感じて視界がブレる。 『効いてないようです。』 「えっ、今体当たりした?金属の塊よあんた…。」 暫く前より後ろを気にして歩いているとシャッターの前まで来た
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