雨女の忘れ物

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男性は「じゃあな、火ありがとよ」と言い残し去って行った。俺はまだ、火のついていないタバコを弄びながら雨を見つめていた。遠くで出棺の号令が聞こえた。さっきの男性の奥さんだろうか。ともすればそろそろ次はくり子の番か。  雨を見つめていると、いつしか頬を涙が伝った。  「……最後に気利かせやがって」  頬を拭い、立ち上がる。無愛想な俺が涙を流すことはない。これは雨が降っているからだ。そんな風に強がり、喫煙所を後にした。
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