雨女の忘れ物

2/4
前へ
/4ページ
次へ
式が終わり、俺は喫煙スペースでタバコに火をつけようと躍起になっていた。  カチン、カチン。  なかなか火がつかない。雨が降っているせいか、どうも湿気ている。どうにかこうにか火が点くと、俺は何かを忘れるように煙を弄んでいた。喫煙スペースには俺しかいなかったが、いつの間にか一人の初老の男性が同じく着火に悪戦苦闘していた。  「やあ兄ちゃん、悪いが火くんないかい?」  「はぁ、まあ」   そういって男性に火をくれてやると、白髪の多くなってきたであろう頭をガシガシとかき「悪いね」といった。 それからしばらく、二人とも無言で雨を見つめながらタバコを吸っていた。ふと俺は雨を見ながら、そういえばくり子は雨女だったと思い返す。反対に俺は愛想が悪いが晴れ男なのが救いだと言われていたか。余計なお世話だと思うが、晴れ男が救いなのは少々意味不明ではある。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加