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式が終わり、俺は喫煙スペースでタバコに火をつけようと躍起になっていた。
カチン、カチン。
なかなか火がつかない。雨が降っているせいか、どうも湿気ている。どうにかこうにか火が点くと、俺は何かを忘れるように煙を弄んでいた。喫煙スペースには俺しかいなかったが、いつの間にか一人の初老の男性が同じく着火に悪戦苦闘していた。
「やあ兄ちゃん、悪いが火くんないかい?」
「はぁ、まあ」
そういって男性に火をくれてやると、白髪の多くなってきたであろう頭をガシガシとかき「悪いね」といった。
それからしばらく、二人とも無言で雨を見つめながらタバコを吸っていた。ふと俺は雨を見ながら、そういえばくり子は雨女だったと思い返す。反対に俺は愛想が悪いが晴れ男なのが救いだと言われていたか。余計なお世話だと思うが、晴れ男が救いなのは少々意味不明ではある。
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