二万年早いぜ? は?

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 頭を隠してしまえば、視界はとても狭かった。 「今日はイベントが分散してるから、いつもより少ないと思うよ」  などと次郎は言っていたが、飛天の目に入るのは、人、人、人の群れである。子供たちの歓声を受けて、飛天はポーズを決めて応える。  手を振り、愛想を振りまくのはお手の物だった。客層と、彼らが見ているのは自分自身ではなく、なりきっているヒーローという大きな違いはあるにせよ。  一緒になって光線技のポーズをしてくれる子供相手には、やりやすい。次郎指導による各種技をローテーションでびしっと決めればいいだけだ。  大変なのは、訳も分からず連れてこられました、という風情の子供。幼稚園にすら入っていないだろう彼ら相手には、中腰姿勢になることも多い。それでいて格好良さは醸し出さなければならないので、なるほどこれは肉体労働だ。  しばらくやってみて慣れたところで、飛天は改めて、会場にやってきた人々を見回した。  家族連れが一番比率としては高いが、列の最後の方は、大人だけのグループや個人が多くなる。  特撮オタク。飛天の嫌いな人種。  彼らは飛天のイメージとは違った。特撮に限らず、オタクという連中は我が強く、自分が特権を享受しようと前へ前へ出張ってくるものだと思っていた。少なくとも、飛天が関わってきたのはそんなオタクだった。  だが、現場にやってきた特撮オタクたちは、子供たちに先に並ばせ、自分は列の最後尾に回る。ヒーローは子供たちのものだということを、わきまえているのだ。  素直に感心した飛天は、大人相手の撮影でもしっかりこなした。思ったよりも、女性客が多い。よくは見えないが、飛天と同年代の女子もいる。彼女たちがぴったりと密着してくるのは、さすがに困ったが、顔には出ない。当たり前だ。マスクで隠されている。
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