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WING2『確かめたい気持ち』
しばらく、そのまま相伴に預かってから部屋へ帰ると、万優は一人スマホを見つめていた。
「……千愛ちゃんは?」
「寝たよ。ああ見えて、まだ子供だから」
時計の針は、日付変更から三十分過ぎを指していた。
「居間に来たら良かったのに」
「うん、行こうと思ったけど……メールしてないの思い出して」
「メール?」
空はパソコンデスクの前に座る万優の傍に寄った。
「大学とか、高校とかの友達。休みの度にメールしておくんだ。上手くいけばみんなと会えるかもしれないから」
言いながら、万優は素早く指を動かしていた。
なるほど、空が覗いても動じないところを見ると、本当に友達に帰省報告しているようだった。
手早く、何人もの友人にメールを送る。
「万優って、スマホいじったりとか得意?」
「うん、まあ……機械は好き」
意外ではあった。
けれど、実はパイロットを目指す者たちは意外と機械が好きな輩が多い。でなければ、あんな機械だらけのコックピットに座りたいなんて思わないだろう。
どうして飛行機が飛ぶのか、計器の仕組みはどうなっているのか……それが知りたくてパイロットになるなんて言っていたヤツもいる。
「……機械と俺なら?」
空は、万優の体を後ろから抱きしめて囁く。
「基準が違いすぎる」
「どういう意味?」
「空は……空は、好きとか嫌いとかそういうよりも……って、邪魔しないでよー」
万優は、言葉を途中で止めて、空の腕を解いた。
「なんだよぉ、久しぶりに二人きりなのに」
「だめ」
完全拒否されて、空は敷かれた布団に転がった。
懸命にメールを送る万優の背中を眺める。
――こんなに近くに居るのに無視かよ。
空は、小さくため息をついた。
――傍に居る恋人よりも、いつも会えない友達にメール。なんだよ、そりゃ。妬きはしないが、ちょっと自信喪失気味かも……いや、その前に。
……本当に恋人、なのか?
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