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明かりは、丸いフロアライト一つ。ぼんやりとオレンジに光る床に、二つの影が重なり、一つになろうとしていた。
「……背中、痛くない?」
「うん、平気」
万優の背中には、一応二人の上着が敷かれていた。気休めにはなるだろうと思って空がそうした。
既に万優のシャツのボタンは大きく開き、滑らかな肌がぼんやりと映し出されている。
空は、ごくり、と息を呑んだ。無防備なその体を前に、急に緊張が襲った。
求めていた温もりが、ここにある。
触れたかったその肌が、そこにある。
「……どうかした? 空……」
「いや…なんでもないよ」
空は万優にキスを落とした。ゆっくりと唇を確かめるように舌先で舐め上げて、そのまま歯列を割って入る。
「ん……」
すっかり空の仕方に慣れた万優は、キスの間から息を漏らす。
その色づいた声に空の感情は否が応でも高まる。
空は唇を胸に這わせ、舌先で愛撫を続けながら右手で万優のベルトを外していった。
ジッパーを下ろして、ジーンズを開くと、熱を帯びた中心が待っていた。
「空、待って……」
「待たない」
数十分前と同じように、空は答えた。
空は、万優の中心に手を伸ばす。それは、空にとってずっと触れたくても触れられない場所だった。
空は多少緊張しながらそっと、それに指を伸ばし滑らせた。
優しく、壊れ物を扱うように愛していくその仕草に、万優の中心も徐々にそり立っていく。
「ん…あ…ダメ……」
万優の手が空の腕にかかる。ふるふると小さく首を振る万優に空が優しい目を向けた。
「ダメ? どうして?」
空は、愛撫を続けながら聞き返す。
「どうって……だって…」
万優が空を見上げる。恥ずかしい、と小さく零す万優の火照った頬と濡れた瞳が空の心を揺さぶる。
――こっちがダメになりそうだよ…
まだ何もしていないのにイってしまいそうになる自分に笑ってしまいそうになる。
「大丈夫だから……ここに居るのは俺だけ。俺のこと、信じてるだろ?」
空の言葉に、万優が頷いた。
空は、その様子に笑顔で返し、万優の衣服を次々に剥がしていった。素肌が空気に晒され、空の前に呈される。
空は、万優の口元に指を伸ばした。
「舐めて」
「えっ……指……を?」
空は静かに頷いた。
本当はちゃんと必要なものを揃えてやらなければいけないのは分かっているが、もう今更やめるなんて出来ない。だったら今使えるもので万優の負担を少しでも軽くするしかなかった。
万優は躊躇いながらも空の中指を咥え、口腔内へ招き入れた。
「しっかり濡らしてよ……痛く無いように」
万優に意味はわからなくとも、空は言った。言うとおりに舌先を指に吸い付かせる万優の姿に空はたまらない気持ちになる。
――本当にこうしてもらいたいのは指じゃないんだけどな……
空は、万優の姿に思ったが初めてでそこまで要求するのは酷だろうと考え直した。
万優の口からしっとりとした指を抜くと腿から滑らせそのまま後孔へ辿り着き、器用にそれを慣れさせていく。
「ふう……んっ…」
多少の痛みはあるのだろう。時々万優の表情が辛そうに歪む。それでも、「痛い」とも「やめて」とも言わなかった。
大きな手のひら全体で、万優の中心を扱き続けると、万優は大きく身をよじった。
「ダメっ」
「何が、ダメ?」
「そんなに……しないで……イっちゃう…」
「いいよ、そうして」
「ヤダ…一緒じゃなきゃ、や…」
洩れる吐息の間から、万優が必死に言葉を繋ぐ。
既に腰は浮いていて、後は発射信号を待つばかりの状態だった。
「いいよ、わかった」
空は、万優の額に口付けてから中心の根元をきゅっと指で押さえた。そうしてから、万優の中に、自分を少しだけ入れる。
「……痛くない?」
頷く万優を確認してから、空はぐっと奥まで挿し入れた。
「うあぁっ……!」
「万優、大丈夫……?」
万優は応えなかった。いや、答えられなかったのだろう。それに甘んじて空は腰を動かし始めた。初めはゆっくりと、そして徐々に早く、強く。
「ダメっ、もう限界…」
万優のその言葉に、空は今まで万優を握っていた指を緩めた。
途端、空の手を暖かく濡らす。
少し遅れて空も万優の中に自分を放った。
「ごめん……一緒じゃなくて…」
空が万優に言うと、万優は笑って両腕を伸ばした。
空の両頬を包むとそれを引き寄せ、キスをする。
「……やっと、ひとつになれたね」
「……万優……愛してる」
「本校で言うんじゃなかったの?」
悪戯な目が空を射る。
いつかの言葉を思い出したのか、万優がそう言って笑う。
「休みが明けたら来るんだから、もういいだろ」
「そうだね……じゃあ、俺も……愛してる、空」
その言葉と笑顔に、空は目を瞠った。そして、我慢しきれずに万優を抱きしめる。
「空、重いよー」
「少しくらい我慢しろ」
「ヤダー、我慢したくない」
じたばたと手足をばたつかせ、くすくすと笑うその声が空の耳元で聴こえる。たまらなく幸せなその感覚に、空が鳥肌を立てた。空は、急に起き上がり万優を見つめる。
「……抱きたい」
「は?」
「もう、一回!」
「……うそぉ」
勢い良く万優に覆いかぶさる空だった。
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