5時限目【先生、部活を作るっす!】

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5時限目【先生、部活を作るっす!】

   今日も天界は晴天、雲ひとつない。  まぁ、設定上雲の上の世界だからな。実際は人間界の裏側だから雲の上でも何でもないのだが。  そんな天界に迷い込んで早くも2週間、  俺は魔界に帰る方法を探すどころじゃないくらいに毎日忙しく働いている。何せうちのクラスは個性派揃いで、色々対応に困るものがある。  例えば構ってちゃんのカマエルや乳を大きくすることしか考えていないシャムシエル。  一日中パソコンと向き合っている眼鏡っ娘天使のマトリエル、本を読んでいて一見知的に見えるが中身が○○本のサキエル……  全く、俺は何を真面目に天使の教師やってんだか。何とかして帰る方法を探さないと。  ——  職員室にて。 「……部活?」 「そおっす! 部活っす! 拙者、まだ入る部活を決めてないっすよ」  マールは部活に入りたいようだが、どうやら迷っているようだ。 「マールは運動神経がいいから運動部がいいんじゃないか?」  俺は書類をまとめながら答えた。 「拙者はそれでもいいっすけど、ガブリンが運動部は嫌って言うっすよ〜」  困った表情で腕を組む。  マールとガブリエル2世はいつも一緒だ。昔からの幼馴染らしいが、部活も同じものに入りたいと来たか。恐らくはガブリエル2世がワガママ言ってるんだろうが。 「ん〜拙者は歌とか踊りとか、絵を描いたりとか……そっち系は苦手っすよ」  それは間違いなくガブリエルも同じだと思う。 「いったいどうすれば……」 「あの〜、そろそろいいかな? 先生、お仕事したいんだけどなぁ……」  マールが座っているのはサハクィエル先生の席である。サハクィエル先生、ずっと待っててくれたんですね……それも笑顔で。 「あ、ごめんなさいっす」  マールは頭のリボンをぴょこんと揺らし立ち上がった。サハクィエル先生はクスクスと口元に手をあてた。天使って、やっぱり怒ったりしないのか? 「まぁ、無理に入らなくてもいいんだぞ? 強制じゃないんだから」 「……少し、考えてみるっす」 「マール〜? 何処なの? マール〜? ……あ、いたの〜! マールなの! またフォルネウスがひとり占めしてたの〜!」  ……以下省略。——ぴゅーっ 「はい、これで大丈夫。今日は三針で済んで良かったのぅ」  そう言って包帯を巻いてくれたのは、保健室の先生、この学校でも珍しくエル付きじゃないメタトロン先生である。  メタトロン先生にかかればどんな大怪我もすぐに治ってしまう程の、所謂、  ——究極の! 癒しの天使である!!  癒しを司る白衣の天使!  さあ! 想像が膨らむだろう!  白衣が今日も似合ってま、す、よ?  って言いたいところだけど、白衣大き過ぎませんかね?  メタトロン。  身長130センチ、体重、軽い。……が、サイズ完全に間違っちゃった白衣を着ている。 「何をジロジロ見ておる? もう一度傷口を開いてほしいのか?」  白い髪を可愛いシュシュでまとめちゃってるメタトロン先生はその翡翠色の大きな瞳で俺を見上げる。これで歳は100を越えてるらしいから驚きである。  完全に幼女ではないか!!  悪魔や天使は二十歳までは人間と同じように成長する。だが、そこからは人間の十倍は生きる。この先生は何処かで成長でも止まったのか? 「フォルネウスよ? 今、私の事を、小さいと思ったであろう?」 「あ、いえ、そんな事は……!?」  心を読まれてる!?  メタトロンは、——おっと、メタトロン先生は何度かコケそうになりながら回転椅子の上に立つ。 「言っておくが私は断じて小さくはないぞ!」キッパリ!  いえ、断じて小さいっす!  危なかった。あれ以上怒らせると解体されかねない。だが、腕は確かなんだよな。傷があっという間に治るんだから、癒しの天使とは良く言ったものだよ、ほんと。  お、マールがいる。  マールとガブリエル2世が廊下の掲示板の前で何かしているようだが。  あまり絡みたくはないが、一応、話しかけてみる事にした。 「こんな時間に何してるんだ?」  新部活の申請書……? まさか、部活を作ろうとしているのか? 「あ、先生。決めたっすよ、部活! 新しく作る事にしたっすよ! ほら!」  天使部……なんだそりゃ……? 「活動内容は特になしっす! とりあえず天使らしくがモットーっす!」  マールは大きなリボンをぴょこぴょこさせながら眩しい笑顔をこれでもかと放つ。 「ガブもマールと一緒なの〜、それだけで楽しいの〜!」 「クロエちゃんも入ってくれるって言ってたっすよ!」  天使部ね、とはいえ、 「それはいいが、活動内容を書いていないと申請通らないぞ?」 「……そ、そうっすか……!?」あたふた!? 「なの〜!?」ジタバタ!!  慌てる2人に、俺は1つ提案する。 「天使部、だろ? なら、天使らしくだな……人助けとか、悩み相談とか、校内の掃除の手伝いとか、役に立つことでもすればどうだ?」 「人助けっすかぁ! いいっすね!」 「悩み相談も受けるの〜!」  そう言って2人は活動内容を書き足して投函箱に申請書を入れたのだった。  ——  そして数日後。 「やったっすよー! 天使部通ったっす! 今日からバリバリ活動するっす!」  教室で騒ぐマールの声。  申請は無事通過。あんなのでいいのね。割と緩いものなのだな、部活の申請って。 「後は部室ですが……」  クロエルは少し困った顔をする。 「そうっすね、部室は確保出来てないっす」 「それならガブに良い考えがあるの〜!」  ——  日が落ち、また一日が終わりを告げる。  騒がしい天使達の相手で疲れ切った俺は保健室で治療をして寮に向かう。言うまでもなく、ガブリされた箇所の治療だ。 「今日は早く寝よう、つかれた」  部屋のドアを開けた。  ……  俺はそっとドアを閉める。  何かいるんだけど。とりあえず、俺は深呼吸をして再び自室のドアを開ける。  一、二、三、四……?  マール、ガブリエル2世、クロエルに、そしてモコエルがいる……しかも勝手にお茶まで飲んでやがるよ? 「お、おい……何してんだ?」  するとマールが満面の笑顔で言うのだ。 「部室がないっすからとりあえずここを部室代わりにしたっすよ! 先生としても都合がいいっすよ!」  は? 何の都合が良いんだよ?  マールは部活申請書類の顧問の欄を見せる。  顧問、フォルネウス2世、  って、何でだぁぁぁっ!?  これからは放課後から部活終了の時間までコイツらがここにいると!?  しかも部室の申請もちゃっかり通ってるし!  俺の安らげる時間はないのか……  あー、眩しい……天使、眩しいわ……  ◆◆◆◆◆  こうして天使部は発足したのだった。  頑張れフォルネウス! 天使部顧問として、彼女達を正しい方向へ導くのだ!  ◆◆◆◆◆
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