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7時限目【続・天使部の初仕事】
剣道部にはアルミサエルとアラエルがいる。俺が辿り着いた頃には既にマールは2人にエンカウントしていた。
「アルミちゃんとアラエルちゃん、シャムシャムの家鍵、見なかったっすか? おっ○いキーホルダーの付いたあの鍵っす」
おっ○いキーホルダー? だとぉっ!?
「あーアレか。いや、見ていないな。もし見つけたら天使部に報告するよう、他の子にも言っておくよ」
クラスで唯一のまともな天使、アルミサエル。
周りに比べて少し背が高く、頼れるお姉さん的存在だ。黒髪ポニーテールが良く似合う。何故、この子が委員長ではないのか、いまだに謎だ。
「あららぁ〜大変だね。私も、見つけたらすぐに報告するね」
そう言って汗を拭うのはアラエルか。
彼女は少し天然なところがあるが、危険度は低めな天使だな。濃いめの茶髪ストレートで背丈はアルミサエルより少し低い程度。
そして、この2人は仲がいい。
次はガブリエル2世でも見に行くか。
確か、校内にフワフワ飛んでったよな。
で、到着したのが、情報処理室。
そこには眼鏡っ娘天使マトリエルの姿が。
ガブリエル2世はパソコンに張り付くマトリエルにシャムシエルの鍵を見なかったかと問いかける。
「マトリエル〜、鍵を見なかったの〜? シャムシエルの家の鍵なの〜おっ○いキーホルダーが付いている、あの鍵なの〜」
「あ、ガブリエルちゃん。家の鍵? あぁ、あのおっ○い付きのね、でも見てないわね。よーし、分かったわ、私もネットで検索してみるよ」カタカタ
「え〜……なの」
だよな、そうだよな。検索では引っかからないよな。わかるぞ、ガブリエル2世。今だけはお前の気持ちが痛いほどわかるぞ。
それはともかく、マトリエル。
彼女は授業中も食事中もいつ何時でもパソコンを手放さない。深緑のクリッとした癖のあるショートヘアが特徴で眼鏡を外した所は誰も見たことがない、らしい。実際、俺は見たことない。
次は図書室へ向かった。
図書室にはモコエルがいた。
シャムシエルが今日の昼に立ち寄ったという図書室に訪れたようだ。さすがはモコエル、可能性の高そうな場所を狙い撃ちというわけか。
「ん〜ないね〜……あ、サキエルちゃん」
図書室で一人ニヤけるサキエルを見つけたモコエルは少し戸惑いながら彼女に問いかけた。
「ムフフ、おぉ、ファンタスティック! ……ん? 家の鍵? そんな事より、モコエルちゃんの心の鍵、そろそろ開けてみない〜? ムフフ〜」
「け、けけ結構ですぅ……!」
コイツはサキエル。
寝癖のついた長い真紅の髪が特徴的でいつも○○本を携帯している変態天使だ。
特にモコエルはお気に入りで、事あるごとに身体中を弄られている。
すまんな、ここは早々に退散だ。
少し歩いていると、弓道部の部室前でクロエルを発見した。
休憩中のゼルエルがやってくる。零れ落ちんばかりの爆乳が、クロエルに迫る。
クロエルはその迫力に圧倒されながら濡れた仔犬のように震えながら問いかける。
「シ、シャムシエルちゃんの、い、家の鍵が無くなったみ、みたいなんですが……っ?」プルプル
「それは大変ね。私も気にしておくわね。うふふ、震えちゃって、可愛いわね」
「はわわわわ……」プルプルプルプルプル!!
あぁ、駄目だ。完全に圧倒されている。クロエルには荷が重い相手だったか。
中学生とは思えない色気の塊、ゼルエル。
同性ですら魅了してしまう程の容姿で、担任である俺にまで、その魔の手を伸ばす。断っておくが、彼女は天使だ。
とにかく、ゼルエルは目のやり場に困る。白い肌に水色の綺麗な髪、それに、メロンでも仕込んでいるのかと疑いたくなる双丘の持ち主である。
アレはサハクィエル先生といい勝負だ。
いや、別に見ているわけではなく、勝手に視界に映るだけだからね? か、勘違いしないでよね!?
……取り乱した。お次は、美術室。
俺は美術室で仲良く並ぶ双子天使、ラミエルとレミエルに話しかけてみた。
パチクリパチクリ。パチクリパチクリ。
2人はその大きな金色の瞳で俺をじっと見つめている。とてつもなく眩しい。悪魔の俺には天使の眼差しは太陽を直視するより眩しい。
「お、おう。部活中に悪いな。落し物なんだが……家の鍵を見なかったか? シャムシエルのなんだけど。た、たしか、おっ——」
「見てないエル?」パチクリ
「見てないエル!」パチクリ
あ〜もう……このパチクリ眩しくて辛い。
ラミエルレミエル。
双子の天使でラミエルが姉、レミエルが妹だ。金色のストレートヘアに金色の瞳。見た目の見分けがまるでつかない。背丈は低め、とはいえ、ガブリエルよりは大きいのかな。うちのクラスの最少はガブリエルが独走しているからな。
いや、あと1人いたか。と、そんな思考を巡らせていると、双子天使が思い出したかのように口を開く。
「そういえば、さっきロリエルが廊下を歩いていたエル?」パチクリ
「うんうん、歩いていたエル!」パチクリ
「ロリエルが? それがどうかしたか?」
「ロリエルは帰宅部エル? こんな時間にいるのはおかしいエル?」パチクリ
「うんうん、おかしいエル!」パチクリ
確かに。ロリエルはいつも放課後になるとすぐに帰ってしまう筈。俺って、この学校にきて何気に教師してるけど、何故、誰もおかしいと思わないのだろうか。当たり前のように、俺が受け入れられているのは、何故……いや、今は考えても仕方ない。
とりあえず、ロリエルを捜すか。
「ありがとな、部活頑張れよ!」
俺は双子に手を振り美術室を後にした。
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