カサリ

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 一人でカレーを食べ終わり、食器を片付けに台所へ向う、シンクの中に食器を置いたとき。 カサリ 視界の端で何かが動いた。 『なんだろう?』  と振り返ってみても何もなかった、朝、出かける前に開けたままの小窓から風が吹き込みヒューヒューと歌っている。 「雨、降るのかしら?」  小窓を閉めて洗濯物を確認しようとベランダに向うと黄昏時をとうに過ぎた空には厚い雲がかかり、今にも雨粒が落ちてきそうだった。  洗濯物を取り込み、スマホの雨雲レーダーを確認すると、もうすぐ雨が降る事はどうやら確定のようだ。  夫の和志が傘を持っていっていない事を思い出し『雨が降る前に帰って来れないかな?』とメールを送った。  洗濯物をたたみ終えてもメールの返信はなく、時計を見るともうすぐ8時になる、ついに雨粒が地上にたどり着き、しとしとと小雨が降り出した。 「いくら何でも遅すぎない?」  朝からリクエストをしたくせに、こんなに遅くまで帰って来ないとは、会心の出来のグリーンカレーがどんどん色鮮やかさを失っていく。  リビングから台所のコンロの上にある鍋を何気なく眺めたとき、台所の隅にある異変に気付いた。 「!!?」  その悪魔は早苗の様子をじっと伺っていた…。
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